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Djangoの足首のグングル…魂の鈴の音〜「永遠のジャンゴ」

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『永遠のジャンゴ』2017年制作
エチエンヌ・コマール 脚本 監督作 /レダ・カテブ 主演

映画は、強烈なロマ狩りの殺戮シーンから始まる。

夕暮れが迫るベルギーとフランスの国境、アルデンヌの森。
ここが、ロマの旅芸人らのその日の夜露を凌ぐ寝ぐらだ。
白い髭と白い瞳の盲目の老人が見事な歌を歌い、
ギターをかき鳴らし、ヴァイオリンを奏でる。
青年は薪を拾い集めて森を歩く。
こめかみに突きつけられた銃口…
銃声が乾いた冬の森に響いた。
歌う老人の額に黒い穴が空いた。
音楽が消えた。皆殺しだ。
ナチスは、ユダヤ人だけでなく
障害者や同性愛者、ロマも殲滅の対象としていたのだ。

第二次世界大戦が勃発したのは、1939年、
ジャンゴが朋友バイオリニストのステファン・グラッペリらと
Quintette du Hot Club de Franceという楽団を組み、
イギリスツアーを行なっていた最中のことだった。
グラッペリはイギリスに残ることを選び、
ジャンゴはフランスへと帰還する。

場面は、1943年、ナチス・ドイツ軍占領下のパリ。
連日、音楽ホールFolies Bergèreで満員の観衆を熱狂させるジャンゴだが、
ジャンゴには華やかなステージも名声も何の意味なく、
ただ家族を養う、釣り好きのmusicians… 彼の魂は自由を愛するロマなのだ。
そんなジャンゴにドイツ軍からベルリン公演の依頼が入る。
しかし、芸術はヒトラーにとってプロパガンダの強力な道具に過ぎない。

ジャンゴの命はファミリーと音楽だが、
ジャンゴには、ルイーズというプラチナブロンドの美しい愛人がいた。
ルイーズはロマではない。ジャンゴのロマの共同体にとっては余所者だ。
しかし、ルイーズは付かず離れずの関係の中でジャンゴの音楽を愛し、
家族とは異なる次元での理解者だったのだろう。
たくましいロマの母親、妻、そして、ルイーズ、ジャンゴは本当にいい女に恵まれている。
「戦争はよそ者がするもの。ロマは戦争はしない」と言うジャンゴにとって、
ルイーズは、音楽の外の世界、ロマの外の世界を知る窓のような存在でもある。
ルイーズは、激しいジプシーの迫害が行われているドイツ行きは中止し、
家族を連れて逃げるよう説得した。
ジャンゴは家族を連れてスイスとの国境のフランスレマン湖畔の町トノンに逃避する。

トノンにひとまず落ち着いたジャンゴたちは、小さな酒場で仕事にありつくが、
この町にもナチスのロマ狩りの手は伸びていた。
仲間たちもテントに火をつけられ、ドイツ軍に虐殺され、収容所送りにされて行く。
帽子を目深にかぶって身を隠すように酒場で演奏をしていたジャンゴは、
ある日、ドイツ将校に見咎められてしまう。
そして、ナチス高官の別荘で行われる晩餐会で演奏するよう強要されるのだった。
「キーはメジャー、ブルースは禁止。アップテンポは禁止」というオーダーだ。
感情を高揚させる音楽はナチスの戦争にはタブーなのだ。

その晩餐会は、なんとナチス高官とルイーズの婚約を祝うものだった。
実は、ルイーズは密かにレジスタンス運動に身を置きながら
ナチスの情報に接近するために潜入したスパイだったのだ。
仏英は連合してドイツ軍と戦っていたが、
その夜、レジスタンスはナチスの監視を避けて、
負傷した仲間のイギリス兵をレマン湖から船で逃がそうという計画だった。
ジャンゴは、音楽の力でナチスの気を惹きつけて、
この隠密計画が上手く運ぶよう協力することを決意したのである。

音楽でナチスと闘うジャンゴ!
"Django" is Romani for "I awake."
「ジャンゴ」とは「目覚めた男」という意味の名だ。



ジャンゴは、こっそりと足首に、
赤い紐で編まれたGhungroo(グングル)を巻く。
まるで、儀式のように。

ジャンゴのギターがスローに始まり、
やがて、次第にアップビートしていくと、
ナチスのブーツは踵でリズムを取り始め、
女たちの瞳は濡れて輝き、
スカートの裾をスイングさせて、誰も彼も踊り出さずにいられない。
表の監視の兵士まで窓に吸い寄せられる。
目眩く音楽に陶酔し、生きる喜びが高揚し、もう止まらない!

Ghungrooは、ロマのルーツである北インドの伝統的な舞踏「カタック」で使われる
小さな鈴を紐に編み込んで足首に巻いて踏み鳴らす楽器である。
小さな頃から修練を積むごとに鈴の数を増やして行き、
熟達者になるほどに長いロープ状の沢山の鈴を踏み鳴らして踊る。

「カタック」とは、北インド、イスラムとヒンドゥー、
双方の影響を受けて成立した躍動的な舞踊である。
フラメンコの起源ともされ、奔放で枠にとらわれない自由な表現が特徴的。
激しいステップで、グングルを楽器のように踏み鳴らし、
チャッカルと呼ばれる華麗な旋回を繰り広げ、
演奏者との掛け合いなどをして踊る。

カタック(kathak)という言葉のkathaとは「話」を意味し、
ヒンズー教の寺院の語り部にその起源があり、
信者の前で、神話や神の教えを語る男性の語り部が、カタックの始まりだという。
しかし、一方で、北インド、ラクノウのイスラム王朝内の宮廷舞踊として成立したため、
他のインド舞踊と比較すると宗教色がやや薄く舞台は明るく快活でノリがよい。

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長い紐に施された200個を超える鈴「グングル」の音は、
幸福をもたらす神聖な楽器。


18でキャラバンの火事を消そうとして負った火傷の後遺症の残る手の
三本の指で弦を押さえギターを弾き続けたジャンゴ・ラインハルト。
ジャンゴの43年の短い人生の
33歳から35歳の短い間を切り取った この物語の続きは…
ぜひ、映画館で〜💞





アクラム・カーン
ロンドン生まれのバングラディッシュ系ダンサー/振り付け師。
北インド伝統舞踊カタックダンスの名手。


シルヴィ・ギエム&アクラム・カーン・カンパニー「聖なる怪物たち」
2009年、この素晴らしい舞台を観ました。

「聖なる怪物たち」全編











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