墜落したヘリ AH64Dアパッチ・ロングボウの事故原因は、
メイン・ローターの問題だったようです。
このAH64Dは、高性能のレーダーシステムが売りの高額な戦闘機ヘリですが、
結局、〈ヘリコプターとしての肝心の基本性能の面の故障〉で
事故を起こしてしまったのです。
アパッチの元の基本設計はボーイング社の1990年代のもので、
富士重工がAH64Dのライセンス契約して生産することになり、
国の導入プロジェクトの総額は2000億円に近い額だということです。
しかし、陸上自衛隊は、当初の62機の導入予定を13機で打ち切りとし、
富士重工に訴訟を起こされ、賠償金を351億円を支払っています。
そして、どうやらこの訴訟の富士重工側の協力者として
守屋武昌 元防衛事務次官が関わっていたようです。
守屋氏は、約15年間、防衛商社の山田洋行に便宜供与して見返りを受け、
2007年、収賄の罪に問われ懲役2年半の実刑を受けた人物。
また、第1次安倍政権下で、情報保全隊(2003–2009まで存在)が、
自衛隊イラク派遣に反対する市民などを監視した問題で隊を擁護し、
事態がこじれ、結果的に安倍が退官させた経緯があると言います。
富士重工は一審で敗訴し、2審で逆転勝ちしていますが、
それは守屋氏による「〈初度費〉の特殊性を強調すべき」という
アドバイスの成果だということで、
守屋氏は、富士重工に謝礼として2億円を要求しているのだとか。
〈初度費〉とは、兵器など装備の生産を始めるのに、
必要な道具やラインの構築費用などの初期投資にかかる費用のことで、
ライセンス品であればこれにライセンス料などが加わるというわけです。
このような最悪の墜落事故を起こし、
市民を恐怖に突き落とし、優秀な自衛官を死なせ、
莫大な予算と、おまけに賠償金まで呑み込んだ富士重工のAH64D。
ところが、富士重工がつくったAH64Dは、すでに旧式となっているのです。
ボーイング社は、モデルチェンジしたAH-64Eアパッチ・ガーディアンを
2012年から本格生産しています。
さらに2014年、米陸軍が予定している「未来垂直リフター航空機(FVL)」の導入前に、
アパッチをアップグレード(AH-64F)し、
2040年までに置き換える予定なのだそうです。
ボーイング社のプランでは、
生産ラインはAH-64Fが2026年に終了し、
次にFVLが2030年にオンラインになるように予定され、
軍は2020年代を通じてアパッチを買い続けるという算段であるとのこと。
莫大な防衛費が、非合理的な運用をされているのは、
防衛省・自衛隊から軍需関連企業に天下りし、
防衛利権を貪っているからなのでしょう。
◇ ◇
防衛省・自衛隊から軍需関連企業へは毎年、百人前後の幹部OBが天下っている。
防衛省資料によると、2000年7月〜2006年12月では、
計609名が241社に再就職している。
防衛省5年間の天下り先企業と契約金額(中央調達分)
【参考】
*https://en.m.wikipedia.org/wiki/Boeing_AH-64_Apache
*https://www.google.co.jp/search?q=https://facta.co.jp/article/201703014.html&ie=UTF-8&oe=UTF-8&hl=ja-jp&client=safari
*https://facta.co.jp/article/201703014.html
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AH64D [国vs富士重工]訴訟トラブルまでの経緯
・2001年陸自は候補機選定の際に、米陸軍が湾岸戦争で使った実績があり、
全天候で索敵できる射撃統制レーダーを搭載した世界最強ヘリ、
アパッチ・ロングボウ(AH64D)の調達を検討した。
・2001年富士重工がAH- 64D のライセンス生産開始。
・陸自は2002年12月までにAH64D62機を調達する計画を立てこれを富士重工に発注。
・受注した富士重工は、生産に必要な設備投資やライセンス料など初度費を負担し、
62機に分けて価格に上乗せする計画を立てた。
・ボーイング社はAH-64Dの新モデルを開発(ブロックIII)しており、
2004年には巡航速度、上昇速度、積載量をupさせる複合材ロータブレードの開に成功。
(機能がアップグレードされ2011年11月に納入が始まり、
2012年AH-64Eガーディアンと命名された)
・2006年、富士重工がAH- 64Dの初号機を陸上自衛隊に納入。
・2007年、防衛省は2009年度を最後にAH64Dの調達を断念するため、
調達開始からわずか八年で代替機を選定し直すとした。
調達断念の理由を防衛省防衛計画課は「米ボーイング社が陸自の使用する現行の
AH64Dの生産をやめ、モデルチェンジすると決定したことが大きい。
現行機の米国製部品の値段が跳ね上がる。新型式機を採用するにしても、
旧型式機を改造する手間が必要で現実的ではない」と説明。
ボ社は二十年にわたり、現行機を製造すると約束していたが、
米軍再編によって米政府が装備を見直したことを受け製造中止を決めた。
・陸自は2008年以降、AH- 64Dの調達を13機に縮小。
富士重工業の設備投資などの経費400億円を、08、09年度で調達する
三機の価格に分割して上乗せすることになり一機あたり百三十三億円の追加となり、
結局、08年度は一機二百十六億円もの高価格になる。
・2011年富士重工がAH- 64D 10号機を陸上自衛隊に納入。
・富士重工は初度費の多くが未回収となった。
・富士重工は10年1月、未回収分を請求するため国を提訴した。
・東京地裁は14年2月、富士重工業の請求を棄却。
・2015年1月、富士重工業は控訴した。
・2015年12月に東京高裁が一転して損害賠償請求権を認め、
約351億円を富士重工へ支払うよう国に命じた。
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陸自ヘリ一機216億円 『世界一高い戦闘機』の倍近く 来年度概算要求
東京新聞 2007年11月27日
高額なことで知られる陸上自衛隊のAH64D戦闘ヘリコプターが
来年度防衛予算の概算要求で一機を二百十六億円という超高価格で購入されることが分かった。
「世界一高い戦闘機」といわれたF2支援戦闘機(約百二十億円)より高い。
しかも防衛省は二〇〇九年度を最後にAH64Dの調達を断念するため、
調達開始からわずか八年で代替機を選定し直すという失態を演じることになる。
AH64Dは、陸自のAH1S戦闘ヘリの後継機種。
米ボーイング社製で富士重工業がライセンス生産している。
〇一年の候補機選定の際には、米陸軍が採用し湾岸戦争で使われた実績があることや、
全天候で索敵できる射撃統制レーダーを搭載した「世界最強ヘリ」であることが決め手になった。
AH1Sが一機約三十億円だったのに対し、AH64Dの予定価格は倍の約六十億円。
さらに部品の国産化率を高めるなどしたことで、年を追うごとに価格は高騰した。
来年度の概算要求では、機体価格そのものは一機八十三億円。
調達は現行の中期防衛力整備計画(〇五-〇九年度)で断念するため、
富士重工業の設備投資などの経費四百億円を〇八、〇九年度で調達する三機の価格に
分割して上乗せする。一機あたり百三十三億円の追加となり、
結局、来年度は一機二百十六億円もの高価格になる。
調達断念の理由を防衛省防衛計画課は
「米ボーイング社が陸自の使用する現行のAH64Dの生産をやめ、
モデルチェンジすると決定したことが大きい。現行機の米国製部品の値段が跳ね上がる。
新型式機を採用するにしても、旧型式機を改造する手間が必要で現実的ではない」
と説明する。
ボ社は二十年にわたり、現行機を製造すると約束していたが、
米軍再編によって米政府が装備を見直したことを受け、製造中止を決めたという。
他国の場合、まとめ買いをすることで、今回のような事態を避ける工夫をしている。
AH64Dは本来六十二機を調達する予定だったが、
十三機で打ち止めとなり、代替機の選定が必要。
選択肢は外国機購入や国産開発のほか、汎用ヘリや観測ヘリの転用などが考えられる。
退役するAH1Sの延命措置は避けられず、延命のための出費を迫られる。
<解説>
防衛省がAH64D戦闘ヘリコプターを予定した六十二機から
大幅に少ない十三機で調達を断念する問題は、日本の安全保障に深くかかわっている。
断念は米ボーイング社による生産打ち切りが最大の理由だが、
金さえ出せば後継機の購入は可能だ。
しかし、防衛省はこれ以上の支出は無理と判断した。
航空機を導入する際、毎回のように浮上するのが見通しの甘さ。
AH64Dは当初約六十億円とされたが、
これに近かったのは調達初年度の二〇〇二年度だけ。
年々高騰し、〇六年度は一機百五億円に。
F2支援戦闘機も予定では一機約五十四億円だったが、百二十二億円まで値上がりした。
国産やライセンス生産で、〈価格をつり上げる防衛産業〉と〈買い続ける防衛省〉という
「病んだ構図」がある。
防衛産業に多くの官僚が天下りをしていることも疑念を抱かせる一因となっている。
自衛隊幹部は「国内企業に中途半端に武器を製造できる技術があるから値段が高くなる。
米国から購入するしかない国では、まとめ買いするから問題は起こらない」という。
防衛省は、昨年度からまとめ買いを取り入れた。
しかし、航空機は購入した年度を反映して退役時期がずれるため、
一気に交代させるのは難しいとされる。
このままでは購入可能な主力兵器を前提に防衛力を整備し、
その防衛力に合わせて脅威を見積もるという本末転倒が起きかねない。
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【墜落ヘリAH64Dの汚い裏事情】軍事企業天下り官僚が貪る防衛利権
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