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チリ大統領選、左派のボリッチ氏が勝利 格差是正を掲げ
BBC 2021年12月20日
https://www.bbc.com/japanese/59723146
カスト氏は、投票が締め切られてから約1時間半後、開票率がまだ約50%の時点で敗北を認めた。
開票がほぼ終了した現在、得票率はボリッチ氏が56%、カスト氏が44%となっている。
今回の大統領選における国内の対立は近年でも特に激しく、選挙前には大規模な反政府抗議デモが起きていた。
両氏が示す国の展望は大きく異なっていた。ただし、政権に関わったことがない政党の代表で、政治的な「アウトサイダー」という点では共通していた。
ボリッチ氏は、世界的に最も若い政治指導者の1人となる。
反政府学生デモの元リーダー
学生の抗議運動の元指導者だったボリッチ氏は、2019年と2020年に国を揺るがすほど拡大した、格差と汚職に抗議する大規模デモを支持した。
チリはかつて、南アメリカで最も安定した経済を維持していた。だが現在は、貧富の差が世界最大レベルに広がっている。国連によると、人口の1%が国内の富の25%を所有している。
こうした状況でボリッチ氏は、格差是正のため、年金や健康保険の制度改革を進めると公約してきた。労働時間を週45時間から40時間に減らし、環境への投資を増やすと訴えた。
一方のカスト氏は選挙戦で、法と治安維持の強化や、減税、社会的支出の削減を主張した。また、独裁政権を率いた軍出身のアウグスト・ピノチェト元大統領の業績を擁護した。
カスト氏はツイッターへの投稿で、ボリッチ氏に電話をかけて「偉大な大勝利」を祝福したと記した。
「今日から彼はチリの次期大統領だ。全国民の敬意と建設的な協力を受ける立場にある」
チリでは昨年の国民投票で、ピノチェト時代に制定された憲法に代わる新憲法を制定することが、圧倒的多数の賛成で決まった。以来、国内で大きな変革が進んでいる。
来年3月に退任するセバスティアン・ピニェラ大統領は19日、現在のチリについて、「行き過ぎた分断、対立、論争」がみられると主張。後任には「すべてのチリ国民にとっての大統領になる」よう強く求めた。
(英語記事 Leftist Gabriel Boric wins Chile presidential race)
1970年、 チリでは…
サルバドール・アジェンデの社会主義政権が誕生した。
しかし、1973年、
米ニクソン政権でアジェンデ打倒の謀略計画が進められ、
アウグスト・ピノチェト将軍が、CIA工作よる資金援助を受けて、
軍事クーデターを起こし、
アジェンデ社会主義政権(アジェンデは自殺と発表されるが暗殺の疑いが濃厚)
を崩壊させた。
そして、ピノチェト軍事独裁政権が誕生した。
ラテンアメリカ各地では、
フォルクローレのメロディに社会的な主張を込めた歌によって闘う、
ヌエバ・カンシオン(Nueva canción新しい歌)という
社会変革運動が巻き起こっていたが、
チリでは、ピノチェトによりヌエバ・カンシオンは大弾圧を受ける。
音楽家たちは強制収容所に送られ、拷問を受け、殺害され、
また亡命を余儀なくされた。
『Gracias a la vida』を歌うビオレッタ・パラは、
ヌエバ・カンシオン(新しい歌)運動の先駆者だった。
ビオレッタは、1967年拳銃自殺を遂げる。
彼女を応援し続けた社会主義者アジェンデが政権をとったのは、
その3年後ことだった。
ペルーで急進左派の大統領が誕生 チリやコロンビア、ブラジルの大統領選でも右派苦戦の予想
東京新聞 2021年7月29日 21時31分
【ニューヨーク=杉藤貴浩】南米ペルーで28日、ペドロ・カスティジョ氏(51)が大統領に就任した。農村出身の教師で当初は無名だったが、新型コロナウイルスの感染が広がる中で訴えた社会主義的政策が奏功した。南米では大統領選を控えるチリやコロンビア、ブラジルでも政権を握る右派の苦戦が予想され、「左派ドミノ」が起きる可能性もある。
◆格差解消に意欲
カスティジョ氏は、ペルーの首都リマで行われた就任式で「この国が何世紀も抑圧されてきた階層である農民によって初めて統治される」と宣言。格差解消や新憲法制定、汚職撲滅などに意欲を示した。
大統領選では、中道右派で都市住民や富裕層の支持者が多いケイコ・フジモリ氏を相手に、「鉱山会社が富を奪っている」などと訴え、貧困層への所得再分配や社会福祉の拡充を主張した。当選が近づくと徐々に急進的な発言を弱めたが、改革への期待とともに警戒感も強まっている。
◆有識者「政治から遠ざけられてきた人たちが支持」
中南米政治に詳しい米ポモナ大のミゲル・ティンカー・サラス教授は「カスティジョ氏は、政治から遠ざけられてきた人々の支持を得た。近隣諸国で近年続く流れだ」と話す。メキシコでは2018年、汚職や貧困を解消できない既成政党への不満から同国初の新興左派政権を率いるロペスオブラドール大統領が誕生。アルゼンチンでも19年、通貨安などの経済危機を背景に左派のフェルナンデス氏が大統領に就いた。
◆新型コロナで不満拡大
新型コロナの拡大後は、各国で経済の悪化や格差拡大への不満が一層高まっている。チリでは5月、新憲法草案起草のための制憲議会選で中道右派政権が惨敗。ピニェラ大統領は「人々の要求と希望に十分に対応していなかった」と認めた。19年に発生した格差反対デモの機運も続き、ピニェラ氏の後継を決める11月の大統領選でも左派優勢との見方が強い。
右派政権のコロンビアでも今年、増税案をきっかけに大規模な反政府デモが発生。来年の大統領選では右派に逆風が吹きそうだ。
地域大国ブラジルでは、極右ボルソナロ大統領がコロナ対応に失敗。調査会社ダタフォリャによると、今月の不支持率は就任後最高の51%を記録した。来年10月の大統領選でライバルとされる左派のルラ元大統領は、ペルーでのカスティジョ氏の勝利に「象徴的だ。中南米の人民の闘争で新たな進歩があった」と勢いづいている。
🇵🇪
ペルー大統領選、開票率100%に 急進左派が過半数獲得
日経新聞 2021年6月11日 7:25 (2021年6月11日 7:47更新)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN1103U0R10C21A6000000/
開票で優勢となり、支持者から祝福されるカスティジョ氏(8日、リマ)=ロイター
【サンパウロ=外山尚之】6日に実施されたペルー大統領選の決選投票は開票率が100%となり、急進左派のペドロ・カスティジョ氏(51)が得票率50.2%で過半数を獲得した。フジモリ元大統領の長女、ケイコ・フジモリ氏(46)は不正があったと主張しており、敗北を受け入れない構えだ。
選管当局が10日午後3時(日本時間11日午前5時)すぎに発表した。ケイコ氏は49.8%だった。得票差は約7万票差で、ケイコ氏が約4万票差で敗れた2016年の選挙に続き、歴史的な大接戦となった。
カスティジョ氏は10日午後5時(同11日午前7時)の時点で勝利宣言を正式に出していないものの、ツイッターで当選を祝福するアルゼンチンのフェルナンデス大統領に対し「中南米をより公平で民主的で自由にするために共に働こう」と返答した。
ケイコ氏は一部の投票所で不正があったとして、敗北を認めない構えだ。10日に記者会見を行い、「第1回投票では私が首位だったのに、決選投票では得票数が0になっていた投票所があり、不審だ」と述べ、一部の票を無効にするよう求めている。
検察当局は10日、ケイコ氏が汚職容疑の証人と面会したとして、保釈取り消しと予防拘束を認めるよう裁判所に求めた。ケイコ氏は現在、マネーロンダリング(資金洗浄)に関与した罪で起訴されており、現在、保釈中となっていた。
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追い込まれるボルソナロ 来年の大統領選の行方は
Wedge 2021/12/18(土) 6:01配信
https://news.yahoo.co.jp/articles/7dbb61c8034ac3f45612a00e7f52e20ea8a1bfce
富裕層を重んじ弱者を攻撃する傍若無人な暴言、好戦的なふるまいから「熱帯のトランプ」と呼ばれてきたブラジルのボルソナロ大統領に陰りがみえてきた。
ブラジルは新型コロナウイルスの感染拡大を抑えることができず、米国に次ぐ世界第2位、60万人以上の死者を出している。大統領は当初から「ただの風邪だ」と公の場で、コロナの流行を軽んじ、特段の対策を取らず、ワクチンの導入も大幅に遅らせた。
ブラジル上院の特別調査委員会は2021年4月、疫病蔓延に至る大統領の責任を調べ、10月に1288ページの報告書を議会に提出した。報告書によれば、ボルソナロ氏は「死に至る伝染病の蔓延」(懲役10~15年)「予防的衛生措置の違反」(拘留1カ月~1年)「偽医療」(同3カ月~1年)など9つの罪に問われている。
中でも重いのは国際刑事裁判所のローマ規程(02年施行)にある「人道に対する罪」に問われている点だ。仮に起訴されれば、大統領のコロナ対策の不備が国際法廷で争われることになる。
報告書はボルソナロ氏によるコロナの責任について、軽視発言からロックダウンやマスク着用の妨害までその証拠を記し、息子ら一族によるフェイクニュース、偽情報の伝搬なども詳述している。ただし、大統領を起訴するには、検事総長と下院議長の承認が必要で、いずれも大統領派のため、訴追の実現は難しい。
それでも上院の調査とともに大統領の責任の是非が広く国民の間で語られるようになり、4月時点で33%だった支持率は10月には22%にまで落ちた(ブラジルの主要調査機関ダッタフォーリャ)。
前回18年の大統領選でボルソナロ氏は泡沫候補にもかかわらず、主に右派の若手中間層に後押しされ、決選投票で勝利をつかんだ。汚職容疑で左派の大統領が相次いで逮捕、弾劾されていた時代のことだ。
だがその後、ボルソナロ氏周辺の汚職やコロナ対策の体たらくで支持者は次第に離れ始め、批判に回った者も少なくない。残るはキリスト教福音派や一部の軍人、農民、トラック運転手といった根っからの支持者だが、不景気の下、その数を増やすのは容易でない。
来年10月に予定される大統領選では、03年から10年まで務め最後は汚職で追われたルラ・ダ・シルバ元大統領の優勢が早くも伝えられている。実際、筆者の試算では、ブラジルの所得格差をあらわすジニ係数は、ルラ氏在任の8年間はその前の8年間よりも2倍以上の速さで縮まった。つまり貧富の格差が倍の速さで改善された。ルラ政権のあとのジニ係数はほぼ横ばいか、悪化しており、今のルラ人気を支える一つに、格差改善を実感した記憶があるのは否めない。
焦りを感じたのか、ボルソナロ氏はここに来て給付金を倍増するなど貧困対策に乗り出したが、大統領選までの1年でどこまで支持につなげられるかは不明だ。仮に敗れても、容易に退くとは思えず、トランプ氏と同様、支持者を扇動し一騒ぎ起こすかもしれない。そんな懸念が早くも広がっている。
藤原章生