●公的年金運用、10兆円の黒字 コロナ下の株高反映―20年10~12月期
時事通信 2021年02月05日19時45分
https://www.jiji.com/jc/article?k=2021020500963&g=eco
公的年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は5日、2020年10~12月期の運用損益が10兆3528億円の黒字だったと発表した。黒字は3四半期連続で、大きさは過去3番目。新型コロナウイルスの感染が拡大する中で内外の株価が上昇し、運用益を押し上げた。
21年度年金額、4年ぶり下げ 新ルールで0.1%減
12月末時点の運用資産額は177兆7030億円。市場運用を始めた01年度からの累積収益額は85兆3011億円に上り、いずれも19年12月末に記録した過去最高を更新した。
●コロナ不況下の株高で見えたポスト資本主義の姿、「民」排除の時代へ
ヤニス・バルファキス :ギリシャ元財務相
連載 World Voice 2020.9.9 3:40 会員限定
ダイアモンドオンライン
https://diamond.jp/articles/-/247934
ポスト資本主義経済ではデモス(民)の排除が進むのだろうか Photo:AP/AFLO
『父が娘に語る 美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。』の著者ヤニス・バルファキス元ギリシャ財務相による連載。今回のテーマは、コロナ不況下の株高から読み解く資本主義の変容です。筆者は、デモクラシー(民主制)からデモス(民)が排除されるポスト資本主義経済の姿がこの夏、鮮明になったと指摘します。
8月12日、前代未聞の出来事が起きた。
2020年1~7月にかけて、英国経済は過去最大の後退を記録したと報道された(国民所得は20%を超えるマイナスに)。これに対しロンドン証券取引所が見せた反応はと言えば、FTSE100種総合株価指数が2%以上も上昇した。同じ日、米国が経済の不振にとどまらず、まるで機能不全国家のような状態を示し始める中で、S&P500種株価指数は過去最高値を更新したのだ。
確かに、金融市場が惨めさを助長するような結果を示すことは昔からあった。ある企業の労働者にとって悪いニュース、例えば計画的な人員削減も、その企業の株主にとっては良いニュースである場合が多い。しかし、悪いニュースが大半の労働者を同時に巻き込んでいる場合には、株式市場は常に下落した。すべての人が生活を切り詰め、社会全体であらゆる所得が減れば、平均的な企業収益や配当も圧迫される、という合理的な予測によるものだ。資本主義の論理は美しくはないが、分かりやすかった。
だが、時代は変わった。8月12日の結果に至る展開をもたらすような資本主義の論理は存在しない。売上高と利益の減少が広く予想されたにもかかわらず、史上初めて、それがロンドンでもニューヨークでも持続的な「買い」意欲をもたらした、あるいは少なくともその障害にならなかった。しかもそれは、英国や米国の経済が底を打ち、株を買う好機だと投機筋が考えたからではない。
そうではなく、史上初めて、金融資本家たちは実体経済に対して本当に何の関心も払わなくなったのである。新型コロナウイルスによって資本主義が仮死状態に陥ったことは分かっている。企業の利益率がゼロになりつつあることも、貧困の大幅な増加と、それが総需要にもたらす長期的な影響も分かっている。すでに存在していた階級・人種による深刻な分断をパンデミックが白日の下にさらし、なおも強化していることも分かっている。
投機筋はこうしたすべてを理解した上で、それは無関係だと考えている。そして彼らは間違っていない。各国政府が2008年以来、金融セクター浮揚のために利用してきた巨大なバブルが新型コロナウイルスと衝突して以来、株式市場の好調と経済全体の急激な縮小は両立するようになった。
これは歴史的に重要な瞬間だった。資本主義から、特異なタイプのポスト資本主義へと、微妙ではあるがハッキリとした移行が生じたのである。
ここで一つ、最初から順を追ってみよう。
るいネット
http://www.rui.jp/ruinet.html?i=200&c=400&m=360826
◇ パンデミックが強化した利益と資本蓄積のリンク
資本主義以前において、債務が生じるのは経済サイクルの最終段階だった。
封建主義の下では、まず「生産」が出発点だった。小作農は領主の畑で汗水流して働き、収穫して、代官が領主の取り分を徴収した後、ようやく分け前にあずかることができた。領主の取り分の一部は、領主がそれを売却することにより貨幣に転じた。ここに至って、領主がその貨幣を誰か(国王相手のことも多かった)に貸した時点で、ようやく「債務」が登場する。
資本主義では、順番が逆になる。労働と土地はすでに商品化されており、そもそも生産を始める前に債務が必要だったのである。土地を持たない資本家は土地や労働者、機械を賃借するために借金せざるを得なかった。こうした賃借の条件によって、収入の配分が決定された。ここに至ってようやく生産が始まり、売上を回収し、残りが資本家の利益になる。
つまり、資本主義初期の成功の原動力となったのは債務だった。
だが、資本主義がそのイメージに沿って世界を変貌させるには、第2次産業革命を待たねばならない。
電磁気学の成果により、発電所から電力網、そして部屋ごとの電球まですべて生産する、ネットワーク化された最初の企業が台頭した。こうした企業が膨大な資金を必要としたことで巨大銀行(メガバンク)が誕生し、どこからともなく資金を調達する驚くべき能力も生まれた。巨大企業と巨大銀行の集合体により、市場、民主体制、マスメディアを飲み込むテクノストラクチャーが誕生し、まず「狂騒の20年代」に至り、次いで1929年の株価大暴落を招くことになる。
1933年から1971年までのグローバル資本主義は、戦時経済やブレトンウッズ体制など、ニューディール的な統治枠組みのさまざまな焼き直しの下で、中央集権的に計画されていた。こうした枠組みが1970年代半ばまでに一掃されると、テクノストラクチャーは新自由主義の衣をまとい、その力を取り戻した。1920年代的な「根拠なき熱狂」の波がそれに続き、その頂点で2008年のグローバル金融危機を迎える。
金融システムを浮揚させるため、各国中央銀行は数次にわたり公的資金を金融セクターにふんだんに注ぎ込み、その代わりに世界的に財政緊縮を求め、低中所得家計の支出を圧迫した。緊縮財政による打撃を受けた消費者から利益を得ることができなくなったため、投資家は中銀の絶え間ない流動性供給に依存するようになった。しかし、資本主義に対し、これは深刻な副作用をもたらす中毒症状だった。
(中略)
2009年から2020年にかけて、(中略)実体経済とは関係なく株価が上昇し、広い範囲で企業のゾンビ化が進んだ。新型コロナウイルスがやってきたのは、こうした国家資本主義が行われている最中だった。
パンデミックが消費と生産に同時に打撃を与えたことで、実体経済の側では非金融資産の創出に対して十分な投資を行う能力が最も低水準にあるときに、各国政府は所得を補償せざるを得なくなった。結果として、各国中銀は、ただでさえ企業のゾンビ化を進展させていた債務バブルをいっそう大々的に加速するよう要求されたのである。
パンデミックは、2008年以来、資本主義の基礎を損ない続けてきたもの、つまり利益と資本蓄積のリンクをさらに強化した。
今般の危機は、ポスト資本主義時代の経済を明らかにした。
そこでは、もはや現物の財・サービスの市場が経済的な意思決定を調整することはなく、(巨大テクノロジー企業と金融市場から成る)現今のテクノストラクチャーが産業規模での行動を操り、われわれのデモクラシー(民主制)からデモス(民)は排除されてしまうのだ。
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※テクノストラクチャー
米国の経済学者ガルブレイスが、著書「新しい産業国家」で提案した言葉。企業の所有と経営の分離が進んだ現代では、企業の意思決定は、個人の企業家から、専門化した知識・経験を提供する人々からなる経営陣に移行したとする考え方。
【ガルブレース】より
…大企業支配のもとにある現代の“ゆたかな社会”が,(1)慢性的インフレーション,(2)私的生産のゆたかさと公共サービスの貧しさという社会的アンバランス,(3)宣伝広告による欲望の創出のため不断の飢餓感をもつことを指摘した。
●バルファキスが語る、パンデミック以後の世界経済のゆくえ
ヤニス・バルファキス(聴き手:ロバート・ジョンソン、新経済思想研究所INET所長)
早川健治 | Kenji Hayakawa
本の翻訳家 | Translator of Books
https://kenjihayakawa.wordpress.com/2021/01/07/yanis-varoufakis/