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シン・ゴジラの「自切 Autonomy=尻尾切り 」〜従属栄養生物→混合栄養生物→独立栄養生物

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『シン・ゴジラ』の
ラストシーンのゴジラの尻尾の話。

「ゴジラの尻尾に人型が見えた」ということから
様々な推理がされていますが、

この骨塊は、
ものすごく太くて大きな骨や、やたらと長い脊椎も見える…
私には、「あらゆる脊椎動物の骨」がバラバラになって
固まったように見えます。

脊椎動物とは、
魚類、鳥類、両生類、爬虫類、哺乳類などのこと。
特徴としては、
椎骨でつながった脊椎をもち、
頭蓋骨で守られた脳と脊椎に守られた脊髄、中枢神経をもっていて、
ヘモグロビンを含む“赤い血”を持ち、半規管を持つ動物。

ゴジラは、
爬虫類、魚類や鳥類と進化過程のあらゆる生物の
遺伝子情報を持っており、その情報量は人間の約8倍という設定で、
環境に適応進化することができ、無性生殖もできる。
捕食の必要がないので、歯が不揃いで、舌も無く、
半規管、耳もない。

もともと、ゴジラは、放射性廃棄物を餌としていたが、
シン・ゴジラは、そればかりでなく、
水素や酸素、窒素などの元素から核変換し、
放射性物質を作り出し、
その放射熱をエネルギー源として動くこともできる。
つまり、シン・ゴジラは、
独立栄養と従属栄養の両方を行うことができる
混合栄養生物なのです。

体内に、原子炉のような機能をもっており、
活動する際の排熱処理は血流によって循環冷却しているので、
この仕組みを利用し、
血流を止めることができれば、
排熱処理に不全が発生し、生体原子炉が強制停止し、
ゴジラは凍結する。
血液凝固剤を投与してゴジラを凍結させようと考えたのが、
巨災対の矢口プランだった。

しかし、ゴジラが、混合栄養生物であり、
無機化合物を素材として,
有機化合物を自力で合成して生きることもできる(自立栄養)
ということが判明し、
谷口プランの血液凝固剤も無力化されてしまう
恐れが出てきました。

そこでこの問題をクリアする鍵となったのが、
統合生物学者・牧悟郎(岡本喜八)が遺した暗号化された資料。
これを解読した結果、
ある「極限環境微生物」が、
ゴジラの生体機能を抑制することが解った。
それを血液凝固剤に併せて投与することで、
ヤシオリ作戦が成功したのですね。


アメリカでゴジラの研究を行っていた牧悟郎教授は、
オープニングシーンに現れた
無人のボートの主でした。

▪️『シン・ゴジラ』(2016)オープニングシーン
〜東京湾に一隻のボートが漂流していた。
「私は好きにした 君らも好きにしろ」とかかれた書き置き。
折り鶴、眼鏡、靴。そして、宮沢賢治の詩集「春と修羅」が残されていた。
Glory Maru ー生物学者・牧悟郎(アイツ・岡本喜八)教授の
ボートだった。〜
    元ネタ *Glory Maru (初ゴジ「栄光丸」)
           *牧悟郎(「怪奇大作戦」の牧史郎)
 


このオープニングシーンは、
庵野監督が、最も好きな映画監督として
即座に名を挙げる 岡本喜八監督が、
自費を工面して製作した映画『肉弾』の
ラストシーンから繋がるものでしょう。

▪️『肉弾』(1968)ラストシーン
〜魚雷をくくりつけたドラム缶の舟で漂流するアイツ。
波に揺られて20余年、
昭和43年盛夏、若者が賑わう海岸に漂着する。
白骨化したアイツは叫ぶ。
「バカヤロー、うさぎ(恋人)のバカヤロー、
 戦争が終ったんだって?バカヤロー」〜




  

岡本喜八監督の『肉弾』は、
日本軍が、まるで人間を団子のように丸めて弾丸のように
兵器として用いたことを "肉弾" と表現しました。
岡本監督は、 "肉弾" を自分そのものだと手記に記していますが、
肉弾となった人間は、敵めがけて自爆させられる。
つまり、一度、死んだ。ということです。

さて、
シン・ゴジラの尻尾の先には、
肉の団子ならぬ
このような脊椎動物の骨が、お団子のように固まっています。  
これは、この先どうなるのでしょう? 

ポイントは、「極限環境微生物」ですね。
ゴジラの体内では、ある「極限環境微生物」が作用し、
混合栄養生物に変化したのでしょう。

そして、おそらく、ゴジラを完全生物にするために
「極限環境微生物」を投与したのは、
牧悟郎教授ではないでしょうか?

因みに「牧悟郎」という名は、
『怪奇大作戦』のSRI(科学捜査研究所)随一の頭脳を誇る
科学の信奉者「牧史郎」とリンクしています。

そして、『怪奇大作戦』のドラマは、
「どんな怪奇現象も、人間の手によって引き起こされた科学犯罪である」
という設定なのです。

科学者というのは、
性来、ひたすら真理を追い求めようとするものです。
その欲求に突き動かされた発明という果実は、
それをどう使うかによって、
善にも悪にもなり得るものであることは、
アインシュタインやキュリー夫人、フェルミの研究が、
核爆弾の開発に利用されたことでも自明です。

ゴジラの作り出す放射性物質は、半減期が20日と短く
2 - 3年で影響がなくなるという全く未知のエネルギーです。
ゴジラの体内で、何らかの「極限環境微生物」が作用して、
汚染力の緩やかな放射能性物質を作り出しているのです。

ゴジラの生み出すこの未知の放射性物質は、
人間が制御可能な「新たな夢のエネルギー」か?
「使うことのできる新しい核兵」か?
それとも、ゴジラの体内で極限環境微生物」が組み込まれたシステムは、
「放射性廃棄物の浄化」につながるのか?

謎の「極限環境微生物」が、
半減期の短い、害の少ない未知の放射能性物質を
作り出すことができるという設定は、
『ナウシカ』の「腐海」の世界観に似ています。

一部の菌類や藻類は、「極限環境微生物」ですが、
ナウシカの世界は、陸地の大部分は巨大な菌類がはびこる
広大な樹海「腐海」に覆われています。
腐海は、火の七日間の後の放射能で汚染された世界を
浄化するシステムとして旧人類が作ったものでした。
腐海は王蟲の骸を栄養源として育ち、
環境を浄化する際に、副産物として、毒を帯びた瘴気を発します。
シン・ゴジラの体内には腐海のような装置も
備わっているということでしょうか?

しかし、ゴジラは、
血流凝固剤で血流を止められ、
通常保持しているよりも大量の極限環境微生物が体内に入り、
生体機能が一時停止しているため、
ゴジラの身体は、この新たな状態に
自動的に適応しようとするでしょう。

ゴジラは、混合栄養生物ですが、
従属栄養生物の側面を切り捨てようとするのではないでしょうか?
動物のすべては、従属栄養生物です。

ゴジラは、光合成能をもつ緑色植物と一部の細菌のように、
独立栄養生物に進化しようとしているのではないかと思うのですが、
どうでしょう?

トカゲの尻尾切り =自切

という方法で‼️
シン・ゴジラはとびきり長い尻尾を持っていますからね。





「自切」とは、英語で「Autotomy」
語源的には、auto「自分」tom「切る」となり、
Autotomyオートノミ-とは、
自治、自律、自主性という意味を持ちます。
自律とは、カントが説いた哲学で、
他からの支配・制約などを受けずに、
自分自身で立てた規範に従って行動することなのだそうです。

なるほど、
牧悟郎教授は、
こう書き遺していましたね。

「私は好きにした。君らも好きにしろ。」

この言葉は、「Autotomy」の思想に
繋がるのではないでしょうか。
                
庵野監督も、「Autotomy」を経験しています。
一度、エヴァで死ぬような思いをして、
自分の尻尾を自切するようにして、
エヴァを切り捨てて抜け出したんですね。↓

▪️2013年 宮崎駿 著『風の帰る場所』p170より〜
庵野秀明について〜
   「それはだって本人にもききましたから、
    テレビシリーズのときにどういう目に遭ったかってことをね。
    それで、本当に困ってたから、
    『逃げろ!』って言ったんですよ。
    『本当にやりたくないんですよ』って言っているから、
    『映画なんて作るな』ってね。
    すべてを出し切った人間の状態っていうのは
    自分の経験でわかりますからね。
    出し切ったときにね、商売上の理由で
    それを続けなくちゃいけないってなったら、
    どういう気分になるかって考えたら、
    もうこれは本当にものを作るのを続ける気なら、逃げた方がいいですよ。
    自分が作ったものに縛られてね、
    結局大嫌いなおじさんたちの餌食になるだけですから。
    『おかげさまでビデオが何万本売れました』なんて、
    そんな最低な奴が、経済欄に顔を出すような最低の国に、
    日本はなったわけですからね。たまごっちが何個売れたなんてことがね、
    経済欄に載るなんてもってのほかでしょう」
       
▪️1997年 アニメージュ別冊「宮崎駿と庵野秀明」より〜
庵野 「エヴァ」は来ましたね。
宮崎 来てたね。
庵野 ええ。一度、壊れましたから。あれは、こたえましたね。戻ってこれて、よかったと思います(笑)。
宮崎 逃げるのに、覚悟、要るんだよな。
庵野 ええ。
宮崎 でも逃げ方を心得れば、何とかなる。自分で執着しないことだね。一番大事なことは。
庵野 それはありますね。パッと切り捨てられました。どうでもいいや、というように。
宮崎 だから、まだ次、できるよ。その呪縛に縛りつけられなければ。

********
(補足)
宮崎駿監督の『もののけ姫』の
「シシ神(ティタラボッチ)」は、
ゴジラの生みの親、
レイ・ハリーハウゼンに並ぶ世界のモンスターマスター、
「イシロー・ホンダ」本多猪四郎監督への
オマージュだと思っていますが、

宮崎監督が、
「シシ神は、そんなに位の高い神じゃない」と言っていた。
なぜ、生命の授与と収奪を行う神々しい森の神が、
下級の神なのだろう?と思っていましたが、

シン・ゴジラが、
従属栄養生物を骨の塊にして自切し、
独立栄養生物へと進化するという仮説を立ててみて、
なるほどと、納得しました。













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