
小6が使う社会の教科書、沖縄戦「集団自決」の記述に「軍関与」「軍命」言及なし 24年度使用の教科書検定
琉球新報 2023年3月28日 14:55
https://ryukyushimpo.jp/news/entry-1685009.html
文部科学省は28日、2024年度から小学生、高校生が使用する教科書の検定結果を公表した。小学6年生が使用する社会の教科書では、検定に合格した3社3冊で取り上げられた「沖縄戦」の記述の中で、沖縄戦の最中に発生した「集団自決(強制集団死)」について旧日本軍から住民への命令(軍命)などの関与があったことを示す説明記述がなかった。いずれの出版社も、現行教科書での「集団自決」の関連での「軍命」「軍関与」に言及しておらず、従来方針を踏襲した形だ。
東京書籍(本社・東京)は「沖縄戦」についての写真説明で、「アメリカ軍の攻撃で追いつめられた住民には、集団で自決するなど、悲惨な事態が生じた」などとした。日本文教出版(文教、同大阪)は、「戦場となった沖縄」と題した章で「アメリカ軍の激しい攻撃」で追いつめられた住民の多くが、「集団自決」に及んだとし、教育出版(教育、同東京)は「沖縄戦」の写真説明で「多くの住民が集団で死に追いこまれるできごとが起こった」と記述。いずれも、「集団自決」について旧日本軍による「軍命」「軍関与」の記述はなく、検定意見は付かなかった。
本紙取材に3社は、「発達段階を踏まえた上で、学習内容と照らし合わせて適切なものとなるように編集委員会で検討した」(東京)、「小学生向けということで、事象をより掘り下げるべきかという判断があった」(文教)、「発達段階を踏まえて理解できるように記述する場合は、それなりの紙幅が必要になる。総合的に判断して記述を見送った」(教育)とそれぞれ回答した。
文科省は閣議決定などの「政府の統一的な見解」や、「最高裁判所の判例」に基づいた記述をすることなどを求めた検定基準に照らした審議が行われているとし、「申請社において著作編集された図書だ」と回答した。
「集団自決」の「軍命」「軍関与」については、2011年4月に最高裁で判決が確定した、作家大江健三郎さんの著書「沖縄ノート」での記述を巡り、旧日本兵の親族が出版差し止めなどを求めた訴訟の大阪地裁判決(08年3月)で認められている。同判決は「沖縄県で集団自決が発生した場所すべてに日本軍が駐屯」したとし、「集団自決については日本軍が深く関わったものと認めるのが相当」と判示している。元沖縄キリスト教短期大学学長で、1945年3月に起きた渡嘉敷島の「集団自決」の生き残りだった金城重明さんら、複数の証言も残っている。
(安里洋輔、嘉数陽)
2007年6月18日 沖縄北方問題に関する特別委員会 川内博史質疑
第166回国会 衆議院 沖縄及び北方問題に関する特別委員会 第5号 平成19年6月18日
https://kokkai.ndl.go.jp/#/detail?minId=116603895X00520070618¤t=1
○川内委員 川内でございます。質問をさせていただきます。
私は、きょうは、平成十八年度の教科書検定で、沖縄戦における集団自決に関して、日本軍の関与に関する部分が検定の後削除をされたということに関して質問をさせていただきたいというふうに思います。
まず確認をさせていただきますが、昭和五十九年の六月二十八日木曜日、衆議院内閣委員会、森文部大臣が答弁をされていらっしゃいます。「また、これは国会におきましても当時小川文部大臣が、沖縄の問題につきましても、沖縄県民の感情ということにつきましては十分の配慮をして今後検定に臨むつもりであります、こういう御答弁を申し上げているわけでございまして、」というふうに答弁をしていらっしゃいます。
教科書検定に関して、沖縄の部分については沖縄県民の感情に十分配慮をして検定に臨むという政府としての御見解あるいは方針というものが示されているわけでありますが、この昭和五十九年の森文部大臣答弁は現在も維持されているのかということをまず端的にお答えいただきたいと思います。
○布村政府参考人 お答えいたします。
先生引用されました発言でございますが、沖縄戦が住民を巻き込んだ悲惨な戦いであり、その中で集団自決を初めとする悲劇が起こり、多くの人々が犠牲になったということについては、学校教育においてしっかりと教えていくことは重要であると考えてございます。
教科書の検定におきましては、教科用図書検定調査審議会の専門的な調査審議に基づいて行われるものでございますけれども、その中で教科用図書検定調査審議会の委員が、先生御指摘のような大臣の発言の趣旨でございますが、そのようなことを絶えず認識した上で審議が行われるものと考えております。
○川内委員 済みません、端的にお答えいただきたいんですが、教科書検定において、沖縄に係る部分については沖縄県民の感情ということにつきまして十分配慮をして検定に臨むつもりである、あるいは臨むという政府見解は維持されているのかということを聞いたんです。
維持されているのかいないのかということを答えてください。
○布村政府参考人 お答えいたします。
今引用いただきました大臣の発言につきましては、検定基準そのものではございませんけれども、検定に当たっての姿勢ということで発言されたもので、その趣旨を審議会の委員としても踏まえて検定をいただくものというふうに認識しております。
○川内委員 今回の、日本軍の関与の部分について検定の後記述が落とされた、なくなったということに関しては、沖縄県議会も抗議の決議をされるというふうに聞いておりますし、沖縄県内の各市町村議会で抗議の決議が既になされている。そういう意味では、今回の検定というものが沖縄県民の感情に配慮していたのかどうかということについては、私は、配慮されていない、配慮していないという結果になっているのではないかというふうに思います。
また、それを裏づけるかのごとくに、伊吹文部科学大臣も、これは新聞の記事でございますから、その発言の真意は文部大臣に確認をしなければならないとは思いますが、沖縄県民の皆さんの気持ちには沿わなかったかもしれないということを御発言されていらっしゃる。そういう意味では、私は、政府見解あるいは政府の方針に今回の検定というのはそもそも沿っていないのではないかと言わざるを得ないというふうに思います。
そこで、聞かせていただきたいというふうに思いますが、そもそも教科書検定というのは、文部科学省職員である教科書調査官が検定についての調査意見書というものを取りまとめる、その調査意見書を審議会に提出し、その審議会で検定意見が決定をされるというふうに聞いております。
これが、平成十八年度の文部科学省職員である教科書調査官がつくった調査意見書でございます。この調査意見書には、沖縄戦の記述についてどのようなことが書いてあるかというと、「沖縄戦の実態について誤解するおそれのある表現である。」と。これは、「日本軍がスパイ容疑で虐殺した一般住民や、集団で「自決」を強いられたものもあった」という記述に対して、「沖縄戦の実態について誤解するおそれのある表現である。」ということを文部科学省職員たる教科書調査官が調査意見書にまとめている。
それでは、この調査意見書が、教科用図書検定調査審議会にかけられて、そのまま検定意見となったという事実関係でよろしいでしょうか。
○布村政府参考人 お答えいたします。
先生御指摘の調査意見書については、お話しのとおり、教科用図書検定調査審議会の委員、それから発令されます教科ごとの専門委員、そして教科書調査官、教科書調査官は文部科学省の職員でございますが、その調査の結果を取りまとめたものとして、審議会の審議の材料として提出するものが調査意見書でございます。
今回の集団自決に関する検定意見に関しましては、教科用図書検定調査審議会に調査意見書が出されまして、それを受けまして、審議会におきまして検定意見書を付すための審議が行われ、沖縄戦の集団自決に関する意見につきましては特段の異論がなかったというふうに伺っております。その結果として、調査意見書と同じ趣旨の検定意見書という形で審議会の決定が行われたものでございます。
○川内委員 文部科学省職員たる教科書調査官が取りまとめた調査意見書の中にある意見がそのまま審議会の意見になったという報告を今いただいたわけでございます。
それでは、この調査意見書、文部科学省職員である教科書調査官が取りまとめる調査意見書は、だれが決裁をして審議会にかけるんですか。
○布村政府参考人 お答えいたします。
この調査意見書につきましては、審議会の委員、それから発令されます専門委員、そして教科書調査官の審議の結果に基づいて取りまとめたものでございまして、それを審議会に出すに当たりまして、事務的に確認する意味で内部の決裁をとってございます。
その決裁につきましては、初等中等教育局長までとっているところでございますけれども、これらは、審議会の開催の状況、あるいは教科書検定の合格、不合格という合否の状況など、全体的な状況を確認する意味で決裁をとっている文書でございます。
○川内委員 この調査意見書は、教科書調査官だけではなく、文部科学省の初等中等教育局長まで決裁をとり、決裁をされた上で審議会に提出をされるということでございます。
私は、後ほどもしかしたら赤嶺先生も同様の趣旨の御質問をされるかもしれないんですが……(発言する者あり)きょうはしない。では、私がします。
平成十九年の四月十一日、文部科学委員会、赤嶺議員の教科書検定に関する質問について、伊吹文部科学大臣は、「文部科学省の役人も、私も、ましてや官邸にいる安倍総理も、このことについては一言の容喙もできない仕組みで日本の教科書の検定というのは行われているんです。」というふうにお答えになっていらっしゃいます。文部科学省の役人も私も総理も検定には口出しできない、そういう仕組みになっているというふうに答弁されていらっしゃいます。
今御説明をいただいた文部科学省職員が取りまとめる調査意見書、そしてそれは初等中等教育局長が決裁をするというような仕組み、これは文部科学省の役人が口出しできる仕組みである、そのものであるというふうに思いますが、伊吹文部科学大臣のこの答弁は間違っている、訂正を必要とするということをお認めになられますか。
○布村政府参考人 お答えいたします。
今先生が引用されました文部科学大臣答弁につきましては、教科用図書の検定は教科用図書検定調査審議会における専門的な審議に基づいて行われるものである、また、大臣を初め政治家や事務方がその内容について指示したり介入したりできる仕組みにはなっていないという趣旨と受けとめてございます。
先生御指摘の教科書調査官につきましては、法令で定められた職務として、検定申請のあった教科用図書の調査に当たり、教科用図書検定調査審議会の審議に必要な資料として調査意見書を作成するという法令上の規定に基づいて行った職務で、その職務は専門的、学術的な調査であって、行政的、政治的な意図の入り込む余地はない調査結果と認識しております。
そして、検定意見につきましては、審議会における専門的な審議の結果、最終的に審議会として意見を付すかどうか決定するものであり、検定意見の決定につきまして、教科書調査官自体も決定には参画をしないという形をとってございますので、文部科学省の職員についても、教科用図書検定意見、検定結果、その決定につきまして関与はしていないという趣旨で御理解いただければと思います。
○川内委員 いやいや、関与はしていないって、関与しているじゃないですか、決裁をしたりして。何を言っているんですか。
仕組みとして、口出しできない仕組みになっていると。口出しをしたとかしないとか、事実を言っているんじゃないんですよ、文部科学大臣は。口出しをしました、しませんでしたとか言っていないですよ。口出しをできない仕組みになっていると言っているんですよ。口出しをできない仕組みになっているとおっしゃるから、いや、さまざまな決裁行為を通じて、例えば、では文部科学省組織規則の二十二条第五項「教科書調査官の職務については、教科書課長が総括する。」と書いてあるじゃないですか。
審議会の議論のたたき台になる調査意見書は初等中等教育局長が決裁するんでしょう。決裁するということは、この中身を見て、まずければもう一回やり直せと言える権限を持っているということでしょう。口出しできる仕組みになっているということなんだから、口出しできない仕組みになっていますというのは説明としては不適切でしょうということを言っているんですよ。それは素直にお認めにならなければおかしいんじゃないですか。
○布村政府参考人 教科用図書の検定につきましては、専門家で構成されます教科用図書検定調査審議会において結論を出していただくもの、そういう法律構成になってございます。先ほどの御指摘の調査意見書につきましては、その審議の前提となる調査結果を取りまとめたものでございます。
繰り返しになりますけれども、意見を付すかどうかという教科用図書検定の決定につきましては、あくまでも教科用図書検定調査審議会の御判断ということになっておりまして、文部科学省として、それは尊重して運用しているところでございます。
○川内委員 だから、検定の仕組み全体が口出しできない仕組みになっていると文部科学大臣が言っているから、それは違うでしょうということを言っているんですよ。違うと認めなきゃおかしいでしょう。口出ししたとかしないとかじゃないんですよ。口出しできない仕組みになっていると言うから、できる仕組みじゃないですかということを言っているんですよ。
○布村政府参考人 先ほど御説明しましたように、調査意見書を審議会に出すに当たって、局長まで確認として決裁はとってございますけれども、その内容としては、審議会の開催の状況ですとか、全体として合否がどうなっているのか、そういう全体的な状況を確認してございますが、その段階で、調査意見の内容について事務方が物を申したり指摘することはない、そういう意味で大臣の趣旨を受けとめていただければと存じます。
○川内委員 大臣の趣旨を受けとめてくださいって、そんなことはできませんよ。
では、調査意見書を初等中等教育局長が決裁するに当たって、中身に口出しはしないんだというようなことが文書でどこか書いてありますか、内部文書で。
では、委員長、本委員会に、この平成十八年度調査意見書の決裁書類、決裁書面というんですか、初等中等教育局長の判こが押してある書類の提出を求めます。
○安住委員長 理事会で協議します。
○川内委員 私は、文部科学省は子供たちの教育をつかさどる役所ですから、もうちょっと正々堂々としっかりと議論をしていただきたいというふうに思います。
特に、子供たちは国語力が低下しているとか読解力が低下しているとか言っているわけですね。そういう中で、文部科学省が妙ちきりんな論理を振りかざして変なことをしては、とてもとても、それは子供たちに国語力がどうたらこうたらと言えませんよ。
文部科学大臣がこんな国民をごまかすような答弁をして、いや、それはこういうふうに理解してくださいなんて、そんなことはとてもとても、はい、そうですかなんて言えるわけないじゃないですか。その場その場で適当な言い逃れをして、それで沖縄県民の皆さんの気持ちを踏みにじって、感情を傷つけて、それがあなた方のお仕事なんですかということですよ。
では、もう一点聞かせていただきますが、そもそも、沖縄戦における集団自決に関して、布村審議官は、沖縄県の自民党県議団の中の何人かと東京でお会いになられて、集団自決に関して軍の関与はあったというふうに言明されたという記事が沖縄の地元紙に出ておりますが、その発言は間違いございませんか。
○布村政府参考人 お答えいたします。
この教科書検定の問題が起きて以来、沖縄の方々と何度かお会いさせていただきました。そして、検定意見の趣旨を御説明するとともに、教科書の記述をごらんいただければ御理解いただけますように、沖縄戦に関しまして日本軍が責任を有すること、あるいは関与したということは、全体として記述をごらんいただければわかる、そういう趣旨のことは御説明してございます。
今回の検定意見につきましては、集団自決に関しまして、軍の命令、島における隊長の命令というものが従前は通説でございましたけれども、その状況が変わっているというところから、軍の命令があったかどうか、なかったかどうか、断定した検定意見にならないように意見を付したもの、そういう意見の趣旨を御説明しながら、全体として、沖縄戦に関して日本軍として大きな責任あるいは関与を有しているということは、記述をごらんいただければ御理解いただけるものというふうに御説明したところでございます。
○川内委員 軍の関与があったかなかったかということに関して、読んでいただければわかりますという答弁は、私の質問に答えていないですよ。軍の関与があったんですか、なかったんですかということを私は聞いています。読んでいただければわかりますというのは、では、読んだ方の解釈だということですか。
軍の関与はあったんだというふうに文部科学省としても理解をしている、あるいは認識しているというふうに答えるのか、それとも、軍の関与はなかったというふうに理解している、認識していると答えるのか、どっちかでしょう。
○布村政府参考人 お答えいたします。
教科用図書検定調査審議会の検定意見の趣旨は、沖縄戦全般についての日本軍の責任、関与を否定するものではないという趣旨のことを申し上げました。
○川内委員 否定するものではないと。だから、否定するものではないというのは、関与はあったということなのか、なかったということなのか、どっちなんですか。
○布村政府参考人 お答えいたします。
先ほどの、日本軍の関与というものを、責任というものを否定するものではない、あるいは、あったという趣旨の御説明はしたと思います。
○川内委員 あったという趣旨の説明をしたと。趣旨ではだめなんですよ。軍の関与があったというふうに言っていただきたいんです。どうですか。
○布村政府参考人 お答えいたします。
今、具体的にどういう発言をしたか、やりとりを詳細に記したものは持っておりませんので、趣旨ということを申し上げた次第でございますので、その点は御理解いただければと思います。
○川内委員 私が聞いているのは、布村審議官の御発言、さらには教科用図書検定調査審議会の御意見でも、日本軍の関与はあった、あるいはあったのだというふうに理解していらっしゃるんでしょう、私も同じ思いですから、お互いに共通の理解ですよねということを確認しているんです。
○布村政府参考人 お答えいたします。
繰り返しになりますけれども、教科用図書の検定につきましては、教科用図書検定調査審議会の専門的な審議に基づいて検定意見が付されているところでございまして、それについて個人的な見解を申し上げることは差し控えさせていただきたいということで、先ほど来、日本軍の責任があった、あるいは関与があったという趣旨のことは申し上げたというふうにお答えしているところでございます。
○川内委員 僕は、文部科学省の検定の仕組みというのはやはり非常に問題があると思いますね。文部科学省が、事務方が調査意見書、教科書調査官という形で関与している、そして初中局長まで決裁をする。しかし、文部科学大臣は、口出しできない仕組みになっていると答弁しているわけですね。
これは、きょうは明確に、間違っていましたというふうにお答えにならなかった。委員長に、私はもともと、きょう文部科学大臣の出席を要求しておりました。文部科学大臣の答弁ですから。これは大変大きな大問題の答弁ですよ。それを私が明らかにしたところで、政府からは納得のいく御答弁が得られなかった。私は、沖縄県民の気持ちに配慮しなければならない本委員会に文部科学大臣の出席を求め、この答弁について釈明をしていただきたいと思いますが、委員長、いかがですか。
○安住委員長 理事会で協議いたします。
○川内委員 所管委員会でやるべきだというお声もありますが、私は、この委員会でやることに大きな意義を見出しております。なぜかならば、この委員会は、沖縄は特別なのだ、沖縄には特別に配慮をしなければならないのだということで、国会の総意として特別委員会を設置し、さまざまな問題を議論する場だからであります。
では、この検定の仕組みについて、最後に一つ事実を政府から明らかにしていただきたいと思います。
扶桑社の出していた中学歴史教科書、いわゆる新しい歴史教科書の第一回目の執筆者に伊藤隆さんという方がいらっしゃいます。この伊藤隆さんと、文部科学省が補助金を出す科学研究費補助金を一緒に受けて同じ研究グループで研究をしていた方が今、文部科学省の日本史の教科書調査官となり、今回、平成十八年度の歴史教科書の調査意見書の作成に携わっている方がおります。
その事実を、まず、科研費補助金を受けて伊藤隆先生と同じ研究グループにいた人が教科書調査官になっているということをお認めいただきたいと思います。
○布村政府参考人 お答えいたします。
教科用図書検定につきましては、検定意見は教科用図書検定調査審議会が決定するということをまず御理解いただきたいと思います。教科書調査官は、その前提となる調査意見書を委員の意見なども踏まえて取りまとめるものということで、検定の決定には直接参加していない、そういう前提で御理解いただければと思います。
先生御指摘の、扶桑社の中学歴史教科書の監修者として伊藤隆という教授の方の名前が出てございます。そして、この伊藤教授と、教科書調査官になる前に科研費の研究グループのメンバーに加わっていた者がおり、現在はその科研費のグループとは一応離れているという形になってございます、そういう教科書調査官が日本史を担当しておる者として存在しております。
○川内委員 持ち時間が残念ながら来ましたので終わりますが、審議会には、文部科学省の役人は決定に参加していないという理屈はわかりますが、その審議会の結論に至る過程にずっと関与しているわけでしょう。それをきょう明らかにしたわけですから、それでいながら最後にまたこんなくだらない答弁をするのは、私はやはりとても許せないですね。文部科学大臣の出席を改めて求めて、もう一回やりたいと思います。
終わります。
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第一次安倍政権

伊吹文明
文科大臣(2006年9月26日 - 2007年9月26日)

銭谷真美
初等中等教育局長(2004年7月1日 - 2007年7月6日)→事務次官

伊藤隆
東大名誉教授「新しい歴史教科書をつくる会」元理事
「日本教育再生機構」顧問

照沼康孝
文部省・教科書調査官
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沖縄戦「集団自決」の軍強制削除
問題の教科書調査官は「つくる会」人脈だった
2007年11月4日(日)「しんぶん赤旗 日曜版」
http://saru.txt-nifty.com/blog/2007/11/post_41a4.html

沖縄戦「集団自決」の教科書記述から軍強制を削除する原案をつくった文部科学省の教科書調査官。その4人のうち1人が、調査官に就任したのは、元「新しい歴史教科書をつくる会」の中心メンバーの紹介であることが明らかになりました。(前田泰孝記者)
この教科書調査官は照沼康孝氏。現在、主任調査官です。
照沼氏を紹介したのは東京大学の伊藤隆名誉教授。「つくる会」設立当初から理事です。
照沼氏の、教科書調査官就任の経緯は、時野谷滋氏(元教科書主任調査官)の回想記(『時野谷滋博士還暦記念制度史論集』1986年12月1日発行)で次のように記されています。
「58年(1983年)度の増員(教科書調査官―編集部注)に当たって、どうしても必要な日本近現代史専攻の方を求めたところ、幸いにも伊藤隆東大教授のお力によって、同教授門下の照沼康孝調査官を10月1日付でお迎えすることが出来た」
時野谷氏は当時、主任調査官で、調査官の欠員が生じるたびに、自身が評価する人脈に頼って、採用していた様子を詳しく書いています。
伊藤氏は本紙の取材に、時野谷氏の記述について「その通りだ」と認め、照沼氏は「そちらの解釈に任せる」と否定しませんでした。
「つくる会」は、かつての日本の侵略戦争を美化・肯定する「靖国」派です。
同会がつくった中学生用歴史教科書『新しい歴史教科書』(出版・扶桑社)は、過去01年、05年の2回、教科書検定に合格しています。伊藤氏は01年に執筆・監修し、05年には監修者として名を連ねています。
01年検定では、照沼氏が教科書調査官として扶桑社版を担当しています。
4人のうち2人が弟子
照沼氏は東京大学文学部国史学科(現、日本史学研究室)出身で、伊藤氏の教え子です。
伊藤氏は本紙の取材に「『赤旗』なんかつぶしてやりたい」と言い放ちました。同氏は日本のかつての侵略戦争を次のように正当化しています。
「この結果起こったのは世界中から植民地が一掃されたという事態です」(『正論』1999年1月号)
この特異な戦争観は、伊藤氏が執筆、監修した『新しい歴史教科書』にも表れています。
日本のアジア・太平洋戦争を、当時の軍部の呼び名そのままに「大東亜戦争」と呼び、侵略を「東南アジアやインドの多くの人々に独立への夢と勇気を育(はぐく)んだ」と美化。
沖縄戦については、軍による強制はおろか住民虐殺や「集団自決」そのものに触れていません。
「集団自決」の軍強制を削除させた検定意見原案をつくった調査官4人の中には、もう1人、東大文学部日本史学研究室出身で、伊藤氏の教え子の村瀬信一氏がいます。
日本史担当教科書調査官4人のうち2人が靖国史観の伊藤氏と師弟関係にある―。
「公正・中立」の看板のもとで、こんな事態が進行していたのです。検定制度の根本にかかわる問題です。
渡海紀三朗文部科学相は教科書検定について、日本共産党の石井郁子議員の質問に「透明性をあげるよう検討したい」(10月24日、衆院文部科学委員会)と答弁しました。ただちにとりくむべきです。
教科書調査官制度なくせ
教科書執筆者、歴史教育者協議会委員長 石山久男さん
教科書調査官は人選の基準が不透明です。
照沼調査官が伊藤氏の紹介で調査官になったという事実は、教科書調査官制度がいかに、特定の思想的グループに偏ったものであるかを示したといえるでしょう。
文科省の常勤職員である教科書調査官が検定の主役を担う現行制度は、1956年、政府・文科省が自らの考え方にもとづき教科書の書き直しを強制するために導入したものです。
検定で「集団自決」の軍関与を削除するという政治的介入を許したのは、教科書調査官制度の弊害を典型的に示したものです。こんな制度はなくすべきです。
"仲間内検定"だとは
「つくる会」歴史教科書採択に反対した東京・杉並区の母親(55)の話
まるで"仲間内の検定"だったんですね。
だからでしょうか。杉並区で強引に採択された「つくる会」教科書には間違いが多くて、先生も子どもも親も困っています。
検定のこんな実態が明らかになった以上、この教科書は一日も早く教室から一掃してもらいたいです。