ロシア天然ガスと安倍・プーチン利権【金子勝の言いたい放題】20220317
2022/03/22
ウクライナ侵攻に対するロシアへの経済制裁、日本も参加しています。しかし、エネルギーは別口。サハリン1,2のガス開発、北極海のアーク2からの撤退には手を付けていません。金子先生は、経済制裁は、戦争を始めた権力者の最も痛いところをつき、戦費を断つことにならなければいけないと主張します。サハリン、北極の天然ガス開発は、いずれも日本の商社のみならず国自身が投資しています。開発会社には、プーチン企業や側近企業が権益を持っています。日本は、2014年のクリミア併合で欧米が経済制裁をしているときに、当時の安倍政権が、北方領土交渉があるからと制裁の裏で2016年には経済協力8項目でロシアと合意しその規模は3000億円に上ります。しかし、実はこの時期にはすでに北方領土交渉は失敗が明白となり、言い訳は隠れ蓑でした。日ロ関係、経産外交の蹉跌、安倍首相のご都合主義、と金子先生の舌鋒はとどまるところを知りません。
安倍晋三のロシア案件「アーク2」に出資する三井物産の泥沼
佐高信「この国の会社」
日刊ゲンダイ 公開日:2022/03/28 06:00
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/money/302996
逃げまくる安倍元首相しれっと“ウクライナ派”に転向!赤っ恥「ロシア外交失敗」は語らず ロシア前首相メドベージェフ氏「日ロ交渉は常に儀式的」に安倍元首相ダンマリのナゼ? 安倍元首相の近大卒業式“自画自賛”スピーチに批判殺到! 表立って動くほど空回り
3月23日付の『日刊ゲンダイ』に金子勝が「『サハリン』より筋悪な安倍案件『アーク2』から即撤退せよ」と書いている。ロシアのガス大手を中心とするLNGのプロジェクトのアーク2に出資する日本勢の権益は10%で、三井物産が25%を出資する。経産省丸抱えのこのリスクの高い事業に三菱商事は参画しなかったという。
この事実を知ってすぐに思い出すのは物産の屋台骨を揺るがしたイラン石油化学プロジェクト(IJPC)だろう。どうも、物産はあれから教訓を得ていないようである。物産のトップは池田芳蔵や籾井某など、その後、NHKの会長になって問題を起こした人物を輩出している。トップにふさわしい人物が選ばれているようには見えないのである。
日本とイランの合弁のIJPCは1979年のイスラム革命で盤石を誇ったパーレビ体制が崩壊し、その後、イラン・イラク戦争が始まって、完成を目前にしたコンビナートは、工事中断を余儀なくされる。
高杉良の『バンダルの塔』(講談社α文庫)はIJPCがモデルだが、高杉は小説の結び近くで、ある中堅社員にこう言わせている。
「僕は、長谷川社長(モデルは池田)が首を吊るんじゃないかと心配です。罪の深さを考えたら、夜も眠れないでしょう。たとえ革命であれ、オイルショックであれ、経営者は結果が問われるわけですから、責任をとるのは当然です。それに、IJPCの歴史をふりかえったら、間違いだらけで、べからず集をまとめたら、優に一冊の本ができるんじゃないですか。徹頭徹尾、失敗の繰り返しです」
これは実際に物産の社員が高杉に語った言葉だというが、トップの決断が、たとえ誤っていたとしても、ミドルはその決断に従って、そのプロジェクトを進行させなければならない。そこにミドルを含めた社員の悲哀がある。
高杉がこの小説を書こうと思ったのは、イラン革命を予言した総領事がいた、と聞いたからだった。小説では篠原となっている彼の名は篠村巌。プロジェクトが発足した当時はトルコのイスタンブールの総領事で、アフリカの小国ガボンの大使を最後に退職したが、篠村は「パーレビ体制はまもなく崩壊する」と断言していた。
1974年にまとめられた「事業概要」が「イランの現政権は極めて安定しており、国内・国外ともこれを覆す要因は見当たらず、中近東では最も安定した国と認められている」と書いていた頃である。
しかし、篠村は、イスラム教のシーア派の僧侶の力は侮れないとし、底知れない資本力をもつバザール(市場)商人とモスク(イスラム)の接近から、パーレビ体制の崩れる日は近いと見通していたが、ノンキャリアの外交官だったため、何度、本国やイラン大使館にそれを意見具申しても取り上げられなかったのである。日本の総合商社のカントリーリスク研究に大きな欠陥があると言わざるをえない。(敬称略)
プーチンの北極圏開発に日本が参加する意義
中国の北極への野望をめぐる微妙な駆け引き
東洋経済 石川 一洋 : ジャーナリスト 2019/06/26 6:00
https://toyokeizai.net/articles/-/288101
「1200億円をドブに捨てる覚悟が…」三井物産「アークティック2」という爆弾
Business journal 文=有森隆/ジャーナリスト
https://biz-journal.jp/2022/04/post_290245.html
(抜粋)
”「ロシアのウクライナ侵攻で情況は流動的だが、空前の資源バブルが続いており、総合商社の2022年3月期決算はかなり上振れした模様だ」(外資系証券会社の商社担当アナリスト)
最終利益の着地点は三菱商事、三井物産の「2M」が9000億円台。「もしかすると1兆円の大台に乗るかもしれない」(同)。伊藤忠商事も8200億円という。これまでの見通しを上回るのは確実の情勢だ。
利益のトップ争いは、三菱商事、三井物産のデッドヒート。僅差で伊藤忠と予想しておく。「商事は垣内威彦社長の最後の決算。中西勝也・新社長の最初の決算だから、トップを取りにくるだろう」(ライバル商社の広報担当役員)。
日本全体の対ロ貿易の実績を見ると、ロシアから輸入している金額の60%がエネルギーであり、ロシアの巨大エネルギープロジェクトにトップ争いをしている3商社が参画している。ロシア極東の液化天然ガス(LNG)開発、「サハリン2」から英石油大手シェル(旧ロイヤル・ダッチ・シェル)が撤退を表明した。原油・天然ガスの「サハリン1」もオペレーターのエクソンモービル(30%の権益を保有)が撤退を表明した。三井物産、三菱商事は「サハリン2」、伊藤忠は「サハリン1」に出資している。「サハリン2」の出資比率は三井物産が12.5%、三菱商事が10%である。”
”物産のアキレス腱は「アークティック2」
三井物産は北極海に面したギダン半島の「アークティックLNGプロジェクト2」という爆弾を抱えている。ロシアの第2位のガス大手ノバテクが北極圏ギダン半島に建設している年産2000万トンの巨大LNG計画で、2023年の稼働を目指している。
「アークティック2」には三井物産は4500億円を出資し、10%の権益を確保している。物産の「アークティック2」に参画する契約の調印式は19年6月、「G20大阪サミット」の日ロ首脳会談に合わせて行われた。当時首相だった安倍氏とプーチン大統領が立ち会うなかで、物産の安永竜夫社長(当時、現会長)が署名した。
この案件は当初から「北方領土案件」と呼ばれていた。北方領土の返還に執念を燃やしていた安倍首相は「アークティック2」を日ロ経済協力のシンボルと位置付け、経済産業相の世耕弘成氏(当時)が音頭をとって推進したビッグプロジェクトだ。世耕氏はロシア経済協力分野担当大臣でもあった。
三井物産とともに参画を打診された三菱商事は「ロシアの新興企業のプロジェクトで危ない」(三菱商事の首脳)と判断して加わらなかった。先見の明があったということになる。物産が出資した4500億円のうち75%は経産省所管の石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)が資金支援しており、物産の実質負担は1200億円程度にとどまるとされている。それでも物産の浮沈を握る巨大プロジェクトであることに変わりはない。”
日本政府はサハリン1・2の事業継続を表明も先行きは不透明
木内登英のGlobal Economy & Policy Insight
https://www.nri.com/jp/knowledge/blog/lst/2022/fis/kiuchi/0405
■サハリン1、2撤退の場合、日本は一段のコスト高に見舞われる
ロシアのウクライナ侵攻を受けて、海外企業はロシア事業の一時停止や撤退を迅速に決めた。ロシア経済の生命線とも言えるエネルギー分野では、原油やLNG(液化天然ガス)の生産拠点であり、代表的なプロジェクトである「サハリン2」から2月28日に英シェルが、「サハリン1」からは3月1日に米エクソンモービルが、それぞれ撤退を決めている。そこで注目を集めたのが、双方に権益を有する日本企業、日本政府の出方である。
サハリン1には経済産業省のほか伊藤忠商事、丸紅など、サハリン2には三井物産と三菱商事がそれぞれ出資している。日本は原油の輸入の3.7%、LNGの輸入の8.7%(2021年、財務省貿易統計)をロシアに依存している。LNGはこのサハリン2でロシアからの輸入のほぼ全量を賄っている。また原油は、サハリン1と2でロシア産の約半分を賄っている。
日本がサハリン1、サハリン2から撤退する場合には、原油、LNGをロシア以外から新たに調達する必要が生じる。それが可能であるかという問題に加えて、代替調達の場合には、割高なスポット価格(随時契約価格)で買い付ける必要があることから、コストが高まるという問題も生じる。日本のLNG調達は長期契約が多く、スポット市場で買い付ける量は全体の1割強に過ぎない。現在のようにLNG価格が急騰している局面では、スポット価格は長期契約価格を大きく上回るのである。
仮にスポット価格が長期契約価格の2倍、ロシアからのLNG輸入のうち長期契約分が9割とした場合、ロシアからのLNG調達が止まって、それを他国から割高なスポット価格で買入れると、6,700億円程度の追加コストがかかる計算となる。スポット価格が長期契約価格の3倍である場合には、追加コストは1兆円を超える。
■政府はサハリン1、2から撤退しない方針を明言
対ロ制裁措置の一環として米国とカナダはロシアからの原油・天然ガスの輸入を禁止し、英国は原油輸入を段階的に削減し最終的にはなくすことを決めている。そうした中、日本の対応に世界の注目は集まっていたが、岸田首相は3月31日に、サハリン1、2から撤退しない方針であることを明言した。その理由を、「サハリン事業は日本のエネルギー安全保障にとって重要なプロジェクトだ」と説明した。
また4月1日には萩生田経済産業相が、このサハリン1、2に加えて、三井物産と独立行政法人「石油天然ガス・金属鉱物資源機構」(JOGMEC)などが参画する北極圏のアークティックLNG2についても「撤退しない方針だ」と明かした。
■中国に権益を持っていかれる懸念
資源小国の日本にとって、ロシアからの燃料確保はエネルギー安全保障政策上重要である。また、既述のように、LNGをロシア以外から代替調達しようとすれば、スポット価格での購入となりコストが高まる。それに地理的に近いロシア以外からの調達となれば、輸送コストも上乗せされる。それらはすべて企業や家計の負担となるのである。
サハリンから撤退すれば、中国やインドに権益を奪われかねないという懸念もある。その場合には、制裁措置は有効でなくなる。政府が一部出資するINPEX(旧・国際石油開発帝石)は2004年に、イラン南西部のアザデガン油田の権益を取得した。しかし、核開発問題を抱えるイランへの経済制裁の一環として米国からの要請で2010年に撤退を余儀なくされた。この時すでに約125億円を投資していたが、保有していた10%の権益をイラン国営石油会社に無償で返還した。この権益を譲り受けたのが、中国国有の中国石油天然ガス集団(CNPC)だったのである。中国に権益を持っていかれたという苦い経験だ。
多少長い目で見ると、原油の9割を中東地域からの輸入に依存している日本にとって、ロシアからの調達はリスク分散ともなっている。また、ロシアでの資源事業は北方領土交渉を前進させるカードにもなるため、「国策」として進めてきたという経緯もある。
■代替調達の経路を迅速に確保しておくことが必要に
このように、日本はサハリン事業から撤退せず、ロシアから原油、天然ガスの輸入を続ける姿勢を明確にしたが、先行きについては依然不透明である。今後先進国が対ロ制裁を強化していく中で、他国との協調の観点から、ロシアでのエネルギー開発事業、ロシアから原油、天然ガスの輸入についても、制裁の対象とすることを余儀なくされる可能性があるだろう。
特に、ロシアからの天然ガスの依存度を大幅かつ急速に引き下げていく方針を示しているEUが、原油、天然ガスの禁輸を決めれば、日本としても追随せざるを得なくなるだろう。
また、ロシアはいわゆる「非友好国」に対して、天然ガスの輸入代金をルーブルで支払うことを要求しており、それに従わない場合には天然ガスの供給を打ち切るとしている(コラム「ロシアが新たな枠組みで天然ガスの代金ルーブル払いを再度要求」、2022年4月1日)。これに対して、日本を含む先進各国は、ルーブルでの支払いに応じない構えである。
現時点では、日本が輸入しているLNGはルーブル支払いの枠組みには含まれない扱いとなっているが、今後ロシアがルールを変えてくる可能性もある。対ロ制裁への報復措置として、ロシアが日本への原油、天然ガスの供給を制限する、あるいは停止するリスクは残るのである。
こうした点を踏まえれば、日本は原油、天然ガスの代替調達の経路を迅速に確保することが、国民へのエネルギーの安定供給の観点からも求められる。また自動車の排ガスの触媒などに用いられるパラジウムについては、日本はロシアに40%以上も依存している。こうした金属についても、経済安全保障の観点から、代替調達を模索することが喫緊の課題となってこよう。
(参考資料)
「政府・商社、「サハリン」事業継続で協調、エネ安保重視。」、2022年4月2日、日本経済新聞
「再考エネルギー:抜けられぬロシア事業(その1) 契約前の伊藤忠は「撤退」」、2022年4月2日、毎日新聞
「再考エネルギー:抜けられぬロシア事業(その2止) 資源小国、貴重な権益」、2022年4月2日、毎日新聞
「ロシア、ガス供給停止警告=代金支払い、ルーブルに限定―制裁に報復、G7反発」、2022年4月1日、時事通信ニュース
「サハリン権益、日本は当面維持へ…「のどから手が出るほどほしい」中国の奪取防ぐ」、2022年3月27日、読売新聞速報ニュース
「アークティック2」も撤退しない方針=萩生田経産相
ロイター編集 2022年4月1日10:21
https://jp.reuters.com/article/arctic-meti-idJPKCN2LT2V5
萩生田光一経済産業相は1日の閣議後会見で、ロシア北極圏での液化天然ガス(LNG)開発事業「アークティックLNG2」について、撤退しない方針を明言した。写真は、2021年10月4日、首相官邸に入ってきた萩生田氏。(2022年 ロイター/Issei Kato)
[東京 1日 ロイター] - 萩生田光一経済産業相は1日の閣議後会見で、ロシア北極圏での液化天然ガス(LNG)開発事業「アークティックLNG2」について、撤退しない方針を明言した。
萩生田経産相は3月30日の衆議院経済産業委員会で、「アークティック2」について「事業を止めることは現時点で考えていない」と述べた。
この発言の意味を問われ「撤退しない方針との趣旨」と答えた。ただ「EUの規則が改正され、欧州法人からエネルギーセクターのロシア法人に対する新規投資が禁止されたと認識している」とし「アーク2に及ぼす影響について精査・分析の上、適切に対応したい」とも語った。