郷原信郎×宮台真司×神保哲生:「原賠法」という原発政策の根本的な欠陥を放置したままの原発回帰はあり得ない【ダイジェスト】 2023/01/28
岸田政権は、去年の暮れくらいから、一挙に大転換が行われている。
それは誰がやっているのかは、あまり表に出てこないが、岸田でないことだけは確かだ。
・原発
・防衛費
これを大転換させた。
防衛は、敵基地攻撃能力を持つようにして、戦後の専守防衛の鉄則を踏み越えた。
防衛費を2%とし、一挙に2倍に増やす。これらのことを、訪米時バイデンに約束した。
さらに、”異次元の”少子化対策も行うと言い出した。
いずれも、党内議論も、国民との対話も、国会審議もない。
防衛に関しては、「国家安全保障戦略」「国家防衛戦略」「防衛力整備計画」の3文書を閣議決定した。
閣議決定だけで、日本の安全保障の根幹が変わってしまったのである。
宮台先生が、国会をチェックしたところ、岸田は「完全に文章読み上げボット」で、彼のおつむの中が空っぽである。
官僚が作成した文章を読んでいるだけ。
事実上、岸田政権は、官僚主導の政治である。
防衛政策、原子力政策、子供手当政策、これについての大規模な転換は、役人が書いた筋書きで、役人が長年仕込んできた図式を、岸田が空っぽであるが故に、表に出してきている。
官僚機構の構えが、どういうものなのかが、直ちに岸田政権の在り方として現れてきている。
”電力不足”というのも、作為的なところがあるのではないかと疑われる。
原発事故時の計画停電がそうだった。完全な作為だった。
”原発再稼働するしかない、原発政策に回帰するしかない”という雰囲気を醸成している。
しかも、メディアが批判なく沈黙している。
原発回帰の危険性について、法的な面で、郷原信郎先生に話を聞く。
郷原先生は、「九電のヤラセメール事件」の時の第三者委員会の委員長もしており、
エネ庁の今井尚哉ともかなりやり取りもしているので、内幕も悲し知っている。
「原賠法(原子力損害賠償法)」には、法的な枠組みに根本的な欠陥がある。
このことは、ほとんど知られていない。
去年2022年7月に、東電の旧経営陣に13兆円の賠償命令が出た。
これがまず異常な金額である。
なぜこんな異常な金額の賠償命令が出るのか?
これはそれぞれ個人の収入にしたら何十万年分である。
なぜこれほど巨額の賠償命令が出たかと言えば、
「原賠法」で事故が起きた時の賠償の法律関係が定められているが、
これが、非常に特異で、ものすごく歪んでいるからだ。
欠陥があるのだ。
彼らには重い責任があるので、賠償命令が出て、「破産」は当然だ。
しかし、このような「原賠法」のスキームのもとで原発を運営する電力会社は民間企業である。民間企業である株式会社が、本当にまともな意思決定ができるのか?と。
このことにも大きな問題があるのではないか。

①の無過失責任は、当然だ。
②の無限責任は、賠償に限度がない。これを認めている国は少ない。
外国の場合は限度はあるが、国が負担する。
日本の場合は電力会社に全部負担を負わせる。
電力会社に無限責任を負わせて払わせることができるのか?
保険でカバーするが、保険は1200億が限度。
1959年当時、科技庁は、政府の2年分の予算、3兆7000億の補填を試算した。
今で言えば、200兆。