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【島田雅彦】図らずも山上の意に反し成功してしまった「政治テロ」

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島田雅彦×宮台真司×神保哲生
:小説『パンとサーカス』に込められた日本の現状への危機感 2022/08/27

マル激トーク・オン・ディマンド 第1116回(2022年8月27日)
ゲスト:島田雅彦氏(小説家)
司会:神保哲生 宮台真司

 『パンとサーカス』は作家・島田雅彦氏が2020年7月から21年8月にかけて東京新聞朝刊に連載していた小説で、それを一冊にまとめた単行本が今年3月に講談社より刊行されていた。

 ところがその後、7月8日に安倍晋三元首相が銃撃によって殺害される事件が起きると、『パンとサーカス』が俄然注目されるようになった。この小説が、日本の現状、とりわけアメリカの傀儡として堕落を極めている日本の政治の現状に不満を持った若者たちが、要人を標的とする連続テロを起こす物語となっていたからだ。

 これはあくまで警察発表なので100%正確かどうかわからないが、安倍首相を狙った山上徹也容疑者の直接の動機は、統一教会に対する怨念だったとされている。それはそうだったのかもしれない。そして、母親が統一教会に取り込まれた結果、家庭が崩壊し、奈良県有数の進学校で優秀な成績を修めていた山上容疑者は、大学進学を諦めなければならなかった。結果的にその後、自衛隊に勤務した後、アルバイトや派遣社員として様々な職を転々とする中で、山上容疑者は教団や安倍氏に対する恨みを募らせていったとみられている。それは、上級国民はアメリカに媚びさえ売っておけばあとは甘い汁を吸い放題なのに対し、下級国民はいつまでたっても生活苦から抜け出すことすらできないという現在の日本の社会に対する、激しい怨嗟の念でもあったとは言えないだろうか。

 小説の中で島田氏は、登場人物たちに腐った政官財の指導者たちを厳しく批判させているが、同時にそれを甘受している無知で無関心な一般市民も彼らと同罪であるとして、これを厳しく糾弾させている。「彼らの沈黙の同意によって、腐敗政治がいつまでも続いたのです」(主人公の一人・火箱空也の裁判における最終陳述)と島田氏は記す。

 元来、『パンとサーカス』は2世紀のローマの風刺詩人ユウェナリスがその詩の中で、当時のローマ市民がパン(食べ物)とサーカス(娯楽)を与えられて満足し、政治に無関心になった結果、政治が腐敗していったさまを揶揄するために用いた表現だ。そして今、世界は再びそのような状況に陥っていると島田氏は言う。

 実際、今の世界では、とりあえず市民に最低限の食料と目先を楽しませる娯楽さえ与えておけば、それで十分だろうとでも言いたげな政治が、日本だけでなく世界の多くの国々で行われている。しかし、そこでいう娯楽とは、ローマ時代のようなコロッセオにおける壮大な決闘や競馬とは異なり、戦争、犯罪、天災、疫病など、市民の不安や興奮、恐怖、感動を呼ぶ出来事がすべて娯楽になり得る。少なくとも政治はそれをそのように利用しようとする。

 世直し小説『パンとサーカス』で島田氏が発したかったメッセージとは何だったのか。自分の小説の後をなぞるかのように、実際に要人の暗殺が起きたこと、その後、もっぱら統一教会や統一教会と関係のある個々の政治家が槍玉にあがり、事件の背後にある日本の政治や社会の根本的かつ構造的な問題にまでメディア報道も市民の関心も及んでいないこと、などについて、島田氏とジャーナリストの神保哲生、社会学者の宮台真司が議論した。

【プロフィール】
島田 雅彦 (しまだ まさひこ)
小説家・法政大学国際文化学部教授
1961年東京都生まれ。大学在学中の83年に『優しいサヨクのための嬉遊曲』で作家デビュー。84年東京外国語大学外国語学部ロシア語学科卒業。2003年より現職。10年より芥川賞選考委員。野間文芸新人賞、泉鏡花文学賞、伊藤整文学賞など多数受賞。22年紫綬褒章を受章。代表作に『無限カノン3部作』、『カタストロフ・マニア』、『パンとサーカス』など。



要人暗殺描いた小説「パンとサーカス」著者・島田雅彦さん 
国葬、透ける自民の保身 政治と宗教の癒着、追及を
毎日新聞  金志尚 2022/8/18 東京夕刊 有料記事 2913文字
https://mainichi.jp/articles/20220818/dde/012/010/012000c
 静かな語り口に、憤りがにじみ出ている。「国葬で言論を封じ、政治と宗教の癒着をうやむやにし、党内派閥の力関係を調整するつもりでしょう」。そう推察するのは、かねて政治に物申してきた作家の島田雅彦さん(61)である。宗教団体「世界平和統一家庭連合」(旧統一教会)を巡る問題が政界を揺さぶる中、安倍晋三元首相の国葬に異を唱えるのだ。
 教団との関係が露見する自民党議員が後を絶たない。「本気で教団との関係を断つつもりなら内閣総辞職、解散総選挙をすべきです」。うだるような猛暑が続く東京都内で、島田さんはそう鋭く切り出した。安倍氏の銃撃事件以降、政界の動きに心底うんざりしているという。
 亡くなった安倍氏も、旧統一教会の関連団体にビデオメッセージを寄せるなど、長年つながりを持っていたとみられている。改めて、安倍政治への評価を尋ねると、痛烈な言葉が返ってきた。「『モリ・カケ・桜』などの疑惑のもみ消しにしか政治力を発揮しなかった。そんな人物が首相の在任記録を更新したこと自体、政治の劣化を如実に物語っています」。憲政史上最長の8年8カ月にわたって首相を務めた安倍氏だが、なぜかくも長く宰相でいられたのか。
 「日本政府はいわば、… (有料 残り2405文字(全文2913文字))







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