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『エッグ』椎名林檎/野田秀樹/寺山修司 〜「1940 東京オリンピック」と「731部隊」

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林檎ちゃんとエッグ
野田秀樹の芝居『エッグ』(2012/再演2015)の音楽を担当した林檎ちゃんは、
この時に提供したインストの楽曲「望遠鏡の外の景色」を
リオ五輪の閉会式のフィナーレに採用しました。


7:30〜 「望遠鏡の外の景色」

野田秀樹のエッグ
今夜は、
巨額の税金を投じて国威発揚のために政治利用されようとしている
2020年東京オリンピックに反対する意思を込めて、
野田秀樹さんの芝居『エッグ』に内蔵された
寺山修司の霊魂にシンクロする強烈な「オリンピック批判」について
書いてみたいと思います。

NodaMapの『エッグ』とは…


この作品のタイトルになっている『エッグ (卵)』
「卵」とは、改めて考えてみると神秘的な物体ですね。
硬い殻の中に、これから目覚める生命が眠っているのですから。
神が隠れているカプセルのようです。
Olympicの語源でもあるOlimpiaは、"神の住居" という意味を持っているので、
この物語がオリンピックについて語ろうとしていても
不思議ではないでしょう。
『エッグ(卵)』=Olympic =神の住居…という意味を
含んでいるかもしれませんね。

近代オリンピックの創始者クーベルタンは、
「参加することに意義がある」
「オリンピックに参加することは人と付き合うこと、
 すなわち世界平和の意味を含んでいる」と言いましたが、

寺山修司は、こう指摘しました。
「オリンピックはいつのまにかスポーツマンの祭典ではなく、
もう一つの戦争になってしまった。
クーベルタンは「国家の尊厳」に殺されてしまったのだ。」

****

さて、この芝居は、特殊な構造をもっており、
その構造は、タイトルの「エッグ(卵)」のように、
外殻〜卵白〜卵黄と核心に向かって、
三段階の時代を遡っていきます。

また、さらにその奥の
DNAをもつ核、独自のDNAをもつミトコンドリアなどを
内包する細胞に到達し、
命の記録を間違いなく未来に届ける
伝達装置になっているようにも思われます。

皆さま、このメッセージを
どう聞かれますでしょうか?

この芝居を「卵」に例えるなら、
外殻となるのが、芝居が上演される「劇場」でしょう。
劇場というものは、舞台人、観客が訪れては去る。
けれどもその全ての霊気を留めるカプセルのような場所。
劇場という「卵」の暗がりの中…
NodaMapが上演する『エッグ』という芝居が幕を開けます。

《外殻》
時は現代(2012/2015再演)改修中の劇場。
野田秀樹が扮するこの劇場の芸術監督は、
寺山修司の未完の遺稿「エッグ」を偶然手に入れた。
エッグとは〈壊れ易いボールを移動させる〉
〈記録に残すことを許されない〉競技をいう。
舞台監督は、この競技のスポーツ監督と共に
これを読み解きながら蘇らせようとするが、
解釈は二転三転していく…

《卵白》〜劇中
東京オリンピックを前に、出場を目指す「エッグ」日本チーム。
消田監督率いるチームには、
阿部比羅夫(アベベ・ビキラ)、粒来幸吉(円谷幸吉)たちがいた。
彼らが目指しているのは、来る2020年のオリンピックかと思いきや、
彼らは1964年東京オリンピックを目指すスタープレイヤーたちだったのである。
試合では人気絶頂の歌手・苺イチエが「君が代」を歌って盛り上げ、
見事、日本チームが勝利し、オリンピック出場が決定した。
スポーツと音楽は、人々を熱狂させていた。
(*尚、エッグは女性の競技であり、選手は女性であることが解り、
急遽ナース服を着せるという奇妙な演出になってしまう)
ところが、突如としてオリンピック開催は中止となる。

《卵黄》
実は、エッグ日本チームが目指していたオリンピックとは、
1940年に開催が予定され中止となった幻の東京オリンピックだったのだ。
日本チームがいたのは、東京ではなく
大日本帝国の属国・満州だったのである。
彼らは、オリンピック参加種目登録を同じく目指す他の競技と競い、
中国チームとも戦っていた。
そこで〈世界の9割のもの〉のオーナーは、
「エッグ」のPR映像の制作を命じた。
これに出演することになったのが苺イチエ、
脚本を任されたのが、寺山修司だったのである。
しかし、日中戦争の影響から、
東京オリンピックは開催中止となってしまった。

《卵黄内部・胚盤》
選手の背番号は…7・3・1
日本チームをスパイしていた少女は…◯田 (マルタ)
エッグという競技は…記録することは許されない
…壊れ易い球を壊れないようにいかに美しく移動するか
これらが暗示しているのは、「731部隊」
第二次世界大戦期の大日本帝国陸軍の
細菌戦に使用する生物兵器の人体実験による研究機関であった。
人体実験の被験者は、主に捕虜やスパイ容疑者として拘束された
朝鮮人、中国人、モンゴル人、アメリカ人、ソ連人等で、
「マルタ(丸太)」という隠語で呼ばれていた。
実際は、一般市民、女性や子供も含まれていた。
731部隊では、細菌を培養するためにエッグ(卵)を用いていた。
ナチスのガス室やパンチカードによる効率的虐殺法も用いた。
彼らの「スポーツ」とは「戦争」だったのだ。
エッグ日本チームとは「731部隊」であり、
そしてエッグのプレイヤーは、本当は「女性」であったというのは、
細菌の培養は「卵」が担わされていたからであった。

↑(*登場人物の人間関係等の解説は省略しました)

作・演出:野田秀樹
音楽:椎名林檎

阿部比羅夫:妻夫木聡
苺イチエ:深津絵里  
粒来幸吉:仲村トオル
オーナー:秋山菜津子
平川:大倉孝二
お床山:藤井隆
劇場案内係・芸術監督:野田秀樹
消田監督:橋爪功


********

オリンピック誘致と731部隊設置は同時進行

阿形の金剛力士の影が不気味なポスター

1940年 幻の東京オリンピックとは…
史上アジア初、欧米以外の有色人種国家初のオリンピックを
日本の東京で開催することを1936年IOCが承認した。
日本は、紀元二千六百年記念行事(神武天皇の即位から2600年目)として
準備が進められていたが、1931年満州事変に始まる戦争により、
中止となった。

ちょうど、日本が1940年の東京オリンピック誘致を計画し始めた1930年代初、
同じ頃、陸軍軍医学校防疫部の下に
石井四郎ら軍医が属する防疫研究室が開設され、
(のちに国立感染症研究所が跡地に建設された時に《大量の人骨》が出てきた(後述))
満州に731部隊の設置が着手された。


実際に、
満州の関東軍防疫給水部(石井部隊)に配属され、
細菌培養実験を行なっていた兵士の
生々しい証言が残されています。
http://www.geocities.jp/yu77799/siryoushuu/731/kobayasi.html

731部隊とEgg
わたしらのやった発疹チフスは、動物培養でした。なにを使用したかというと、まずピヨピヨでした。ヒヨコの肝臓ですね。ピヨピヨになるまえの、卵よりちょっとかえりかけたときのをつかいました。班には、毎日、鶏卵がなん十箱ととどく。満人の農業組合を通じてはこばせる。それを孵卵器にいれて選別する。無精卵をとりのぞくのです。孵卵器にいれてしばらくすると、無精卵はかえらずにくさってしまう。それで有精卵だけに、プツンと注射針をさして生菌を植えます。おなかの胎児に、プツンと針をさすようなもんですわ。そりや最初はへんな気持ちがしました。でもそういったら、「おまえ、生卵たべるだろ。もっと残酷じゃないか」そういわれましてね。たしかに生卵をパチと割って、ツルッとすするってのも、おぞましいもんですね。目玉焼きなんていって、やりもしますがね。でも生きものの形になったものに針をさすのとまだ卵のうちとはちがうじやないかと思いましたよ。(P35)…しかし、こうやってだんだん平気になるんです。人間のマルタ実験だってね、平気になる。生菌を注射した卵は、孵卵器に十日間くらいいれて、卵をとりだす。そこでパチンと割ると、形になりかけたばかりのちいさなヒヨコがでる。手のひらのくぼみにはいってしまう、ピクピクうごくくらいのクチャリとしたものを、小さいメスで裂いてとりだすのが肝臓でして、赤い色の、ほんの豆粒くらいなもんでした。班員は全員大きなマスクして、目だけ光らせて、もくもくとやります。まえにおいた乳鉢へ、赤い豆粒を、ポトポトいれていく。三十人の隊員中、少年隊員は五人いましたがね、まるで顔じゅうマスクのようなぐあいで、大バケツにわった殻をすてたりなんかしていました。乳鉢へいれた肝臓は、乳棒ですりつぶします。こうして生菌がつくられるんです…(p36-7) 続・語りつぐ戦争体験4 満州第731部隊』


1:08:23〜
石井四郎は、GHQに731部隊の実験データーと引き換えに戦犯免責を謀った。

エッグ(731部隊)と現代医学
石井四郎も京都大学医学部の出身であったが、
731部隊をはじめ生物化学兵器研究の研究者は、
国内の最高学府卒業した者が多く、
これらの研究者のほとんどは戦後になって大学医学部へと戻り、
日本の医学会において重鎮となった。

1950年に日本の血液銀行として設立され、
1965年血液売買部門を廃止して血液を原料とした医薬品メーカーに転換した
「ミドリ十字」の創始者は、
石井四郎の片腕、内藤良一であり、
731部隊隊長を一時務めた北野政次が顧問をしていた。
ミドリ十字は、1980年代、主に血友病患者に対し、
非加熱製剤を使用したことにより、
多数のHIV感染者およびエイズ患薬害エイズ事件において被告となった。

このように、現代の医学界にも731部隊の研究は影響を及ぼしているが、
身近なところでは、誰もが感染し易いインフルエンザのワクチンの
製造工程は、731部隊の証言の細菌培養の様子を彷彿とさせられる。
日本では、インフルエンザウイルスを鶏卵(鶏の受精卵)で培養し
増殖したウイルスによってワクチンを製造しているのだ。


インフルエンザワクチン株選定は、『国立感染症研究所』で開催される『インフルエンザワクチン株選定のための検討会議』で検討され、これに基づいて厚労省が決定・通達している。
戦後、衛生状態が悪く、感染症対策が緊急の課題となり、抗生物質やワクチン等の開発と品質管理に指導的役割を果たす厚生省の附属試験研究機関として、1947年に「国立感染症研究所(旧国立予防衛生研究所)」は設立された。
1989年、建設予定の国立感染症研究所の建設現場で、新宿区戸山の旧陸軍軍医学校跡地に四肢が様々な位置で切断された大量の人骨が発見された。人骨は、モンゴロイドのもので100体分以上、人為的な加工の跡や銃弾孔や刀傷があり、731部隊の犠牲者の可能性があるとして調査され、現在、ミトコンドリアDNAによる調査を厚労省は要求されている。2009年には、インフルエンザウイルスに関する研究の拡大、発展を図るため、新たに職員の増員を図りインフルエンザウイルス研究センターが発足した。

********

さて、
現実には、寺山修司は「エッグ」などという脚本は書いていません。
では、なぜ野田さんは「寺山修司」を取り上げたのでしょう?

寺山修司とオリンピック
寺山修司は、60年代末頃から、海外でも高く評価され、
ドイツ、フランス、イタリア、オランダ、セルビアなど、
国際芸術祭に参加し栄冠に輝いてきた国渣的芸術家でした。
寺山が、オリンピックに関わったのは、
1972年、ミュンヘン・オリンピック。
この芸術祭で、野外劇『走れメロス』を上演するも、
アラブゲリラテロ事件による芸術祭展示中止となり、
大道具を炎上させるという中止抗議行動を行ったそうです。

〜1972年ミュンヘン・オリンピックの芸術プログラム、
「オリンピックの演劇化」に劇団・天井桟敷を率いて参加した。
このプログラムの趣旨は、
「オリンピックの歴史への反省をこめて、批判的に演劇化する」
ということだった。
天井桟敷は、オリンピック開催に反対した400人の学生が
軍によって射殺された68年メキシコ・オリンピックを題材にした
野外劇を公演した。
10日間続けられた公演が突如、
IOC(国際オリンピック委員会)の指令で中止された。
アラブゲリラによるイスラエル選手団宿舎襲撃事件
(犠牲者は選手・役員合わせて11人)が起きたからだ。〜
この続きはこちら!必読です! http://diamond.jp/articles/-/6622


トラテロルコの虐殺
メキシコシティオリンピックの10日前、1968年10月2日、メキシコ市トラテロルコ地区三文化広場で行われていた学生と労働者による反政府集会が軍や警察によって鎮圧され、多くの死者を出した事件である。メキシコ政府は、オリンピックの誘致のために、1.5億ドルの大規模な投資を行っていた。政権は労働組合、農民を抑圧し、反乱鎮圧政策を行っていた。学生たちは政権に不信を募らせ民主化デモを行っていた。



「マッチ擦るつかのま海に霧ふかし
  身捨つるほどの祖国はありや」
           〜寺山修司『われに五月を』の「祖国喪失」より



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