Quantcast
Channel: ☆Dancing the Dream ☆
Viewing all articles
Browse latest Browse all 4771

【ポロッと出てきた…スケッチ②】志賀直哉

$
0
0

【ポロっと出てきた…スケッチ①】嫌われ松子の一生

このスケッチ↑の他にも、
未整理の紙の束の中から、
ポロリと出てきたスケッチがもう一枚。


蔵書の土門拳の写真集『風貌』の中の
志賀直哉の美しい額の頭蓋骨と
日本の懐かしい風景を映し出しているような
老いて澄んだ眼差しに
魅せられて描いた記憶が…






中の海の彼方から海へ突出した連山の頂が色づくと、
美保の関の白い燈台も陽を受け、はっきりと浮び出した。
間もなく、中の海の大根島にも陽が当り、
それが赤鱏を伏せたように平たく、大きく見えた。
村々の電燈は消え、その代りに白い烟が所々に見え始めた。
然し麓の村は未だ山の陰で、遠い所より却って暗く、沈んでいた。
謙作は不図、今見ている景色に、
自分のいるこの大山がはっきりと影を映している事に気がついた。
影の輪郭が中の海から陸へ上って来ると、
米子の町が急に明るく見えだしたので初めて気付いたが、
それは停止することなく、恰度 地引網のように手繰られて来た。
地を嘗めて過ぎる雲の影にも似ていた。
中国一の高山で、輪郭に張切った強い線を持つこの山の影を、
その儘、平地に眺められるのを稀有の事とし、
それから謙作は或る感動を受けた。
〜『暗夜行路』
時任謙作が鳥取の大山から美保湾 中海 日本海側を見晴るかすシーン〜




Viewing all articles
Browse latest Browse all 4771

Trending Articles



<script src="https://jsc.adskeeper.com/r/s/rssing.com.1596347.js" async> </script>